最新記事

朝鮮半島

韓国の脱北者団体「北とのネットワーク壊滅」と訴え 文在寅政権が圧力

2020年8月14日(金)12時33分

韓国の北朝鮮脱北者支援団体が、長く機能してきた脱北ネットワーク が壊滅しかねないと訴えている。写真は2014年1月、坡州で物資を運ぶ風船を北朝鮮に向けて放つ脱北者(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の北朝鮮脱北者支援団体が、長く機能してきた脱北ネットワークが壊滅しかねないと訴えている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う南北国境封鎖と、北朝鮮との関係強化を図る文在寅政権の支援団体への圧力があいまっているためという

韓国統一省は先月、脱北者が代表を務める25団体の活動を調査すると明らかにした。書類提出の不備が理由。他に64団体への調査の可能性も示唆した。今月12日時点で調査対象は289団体に拡大している

文政権は北朝鮮との対話再開と合同経済プロジェクト再開に努めようとしている。統一省は既に、北朝鮮の体制批判ビラを散布した2団体について、北朝鮮側からの苦情を受けた後に団体免許を取り消している

脱北者団体への調査は1998年以来、ごく数件で、免許取り消しも1団体のみだった。免許がないと団体は課税の優遇措置を受けられず、献金は受けられるが自らの資金集めの活動はできない。約30団体は合同で統一省に対し、「差別的な取り調べ」をやめるよう求める声明を出した

団体の多くは長年、北朝鮮の「地下ルート」と呼ばれる仲介業者や慈善活動家らの非公式のネットワークを通じて北朝鮮からの脱北を支援。その際に韓国政府とひそかに協力してきた

今年は今年6月時点で、韓国にたどり着いた脱北者は147人とこれまでで最も少ない

一方で、団体によると、文政権は既に関連予算を大きく削減しており、さらに調査の影響で献金も集まっていない

複数の団体はロイターに対し、国境が再開されても脱北者支援のネットワークはもう元に戻らないかもしれないと話した。団体設立者は「調査がたとえ何事もなく終了しても、そのときまでにネットワークはほぼ分解され、脱北ルートは消え、団体も閉鎖されているだろう」と語った

ソウル拠点の21団体の連合は先月、国連に文政権のこうした政策を点検するよう求める嘆願書を送付している

統一省報道官は調査は脱北者が標的ではなく、団体の規則順守を確実にするためだと語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中