最新記事

香港

日本が国安法の対象になりつつある香港民主派逮捕と保釈

2020年8月13日(木)21時46分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

一方、「法廷保釈」は第221章の「刑事訴訟手続き条例」の9D1に書いてあり、その概要を書くと以下のようになっている。

――警察署での保釈申請が不成立の場合もしくは警察署での保釈が認められなかった場合には、勾留されてから48時間以内に、被逮捕者を裁判所に出頭させ、罪状認否の手続きを行う。刑事訴訟法の規定により、被告人は裁判所での最初の審理で、裁判官に保釈を申請することができる。

このようになっているので、今般の保釈は「警察保釈」であると言える。

一方、逮捕権限は香港警察にあり、香港政府の警察権の下で逮捕したのは言うまでもない。

今後の取り扱いと可能性

今般の逮捕者はパスポートも取り上げられているので海外に亡命することもできないし今後は香港国家安全維持法(以後、国安法)に即して判断されていくことだろう。

起訴が決まった場合は、国安法第44条にある以下のような規定によって裁判が進む(以下に列挙するのは、遠藤が重要と判断した概要で、これは『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』の「あとがき」と重複する)。

●香港特別行政区行政長官は、全てのレベルの裁判所の裁判官の中から、若干名の裁判官を選び、国家安全に危害を及ぼす犯罪の処理に当たらせる。

●行政長官が指名した裁判官の任期は1年とする(遠藤注:もし任命した裁判官が不適切だった場合は他の裁判官を指名することができるようにして、北京の意向通りに判決を出す裁判を執行させる)。

●裁判官の任期内に、万一にも裁判官が国家安全を侵害するような言動をしたならば、 国家安全担当裁判官の資格を剥奪する。

●国家安全犯罪に関する裁判は国家安全犯罪担当裁判官が審議する(遠藤注:外国籍裁判官に民主活動家の裁判を担当させない)。

すなわち基本法で規定されたコモンローによる外国籍裁判官には裁判を担当させないというのが骨子であり、今般の逮捕の理由も「外国勢力と結託したという国安法違反容疑」であると思われることから、今後は全て国安法が適用されていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪政府、25年度の国債発行予定額引き上げ 予算案受

ビジネス

英FCA、金融機関のリスクテークへの姿勢見直しへ 

ビジネス

訂正企業向けサービス価格、2月は3%上昇 人件費な

ビジネス

英GSK、帯状疱疹ワクチンの認知症リスク低下効果を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中