脱北者、北に逃げる。物語で描かれないその素顔
ゆるゆるだった韓国軍の警戒
この事件について、韓国国民からは脱北者管理システムの甘さを指摘する声が上がっている。7月末、韓国陸海空軍を統合指揮する合同參謀本部は、キム氏が北朝鮮側に到着するまで合計7回も軍監視装置に姿が捉えられていたことを明らかにした。
キム氏の越北を発見し防ぐことが出来たのにも関わらず、見逃してしまったこの事件に対し、合同參謀本部は海兵隊司令官と各軍団長を厳重注意し、さらに海兵2師団長を補職解任するなど厳しい処置を与えた。
それというのも、調査結果によりキム氏が北朝鮮に帰るのに利用したとされる国境線近くの排水路は、軍部隊の規定により、1日2回排水路侵入防止装置を点検することとなっていたが、それをまったく行っていなかったことが発覚したからだ。
さらに、この報道の翌日、8月1日には脱北者の管理について、警察官1名につき30-60名にも上る人数を担当していることが明るみになり波紋を呼んだ。あまりにも多い人数に脱北者担当官と脱北者との信頼関係を気付くことは難しく、管理といってもたまに警察署から電話をする程度だという。さらに、脱北者のうち約10%が電話番号を勝手に変更して連絡もしないため、実質的に管理ができていない脱北者もいる状態だ。
越北を幇助? 警察が怠慢?
またキム氏の越北問題は、あるユーチューバーが関与していた疑惑がもちあがっている。彼女も同じく脱北者であり、アルバイトをしながらユーチューバーとして動画投稿をしていた。キム氏とは車を貸し借りする仲であり、キム氏逃亡の前日に車を貸していたが、他の友人からキム氏が越北の恐れがあるという噂を聞いて、警察署を訪ね通報した。
しかし、警察に取り合ってもらえなかったという。これについて警察側は「訪ねてはきたが、越北のことではなく車両窃盗申告のみ行った」と反論した。
今、この脱北ユーチューバーが、キム氏の越北を「知っていたのにも関わらず通報しなかった。」「いや、通報したのに取り合ってもらえなかった」と意見が対立し論争にまでなっている。