最新記事

絶滅危惧種

手に乗る大きさのゾウの仲間、約50年ぶりにアフリカ東部で見つかる

2020年8月21日(金)16時30分
松岡由希子

長く伸びた鼻を用いて主に昆虫を食べる...... Steven Heritage, Duke University Lemur Center- YouTube

<1973年以降、生息が確認されておらず、保存標本39体のみが世界の博物館で収蔵されていた「ソマリハネジネズミ」がアフリカ北東部ジブチで確認された...... >

分類学上、ゾウやツチブタ、マナティーと同様に、アフリカ獣上目に属する「ハネジネズミ(跳地鼠)」は、ネズミほどの大きさで、長く伸びた鼻を用いて主に昆虫を食べる。

アフリカ大陸東部「アフリカの角」を生息地とするハネジネズミの一種「ソマリハネジネズミ」は、1973年以降、生息が確認されておらず、保存標本39体のみが世界の博物館で収蔵されている。

米野生生物保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)」では、ソマリハネジネズミを「最重要探索対象消失種」のひとつに指定してきた。

約50年ぶりにアフリカ北東部ジブチで確認

しかしこのほど、約50年ぶりに、ソマリハネジネズミがアフリカ北東部ジブチで確認された。一連の研究成果は、2020年8月18日、オープンアクセスジャーナル「ピアジェイ」で公開されている。

米デューク大学キツネザルセンターのスティーブン・ヘリテージ研究員らの共同研究チームは、ジブチでの地域住民への聞き取り調査などから、ソマリハネジネズミが現在もジブチに生息しているのではないかと考え、2019年2月1日から15日間にわたって、現地調査を実施した。

ジブチの12のエリアで計1259個のワナをしかけ、無糖ピーナツバターとオートミール、酵母エキスを混ぜた餌でおびき寄せたところ、アフリカトゲネズミ263匹、スナネズミ17匹とともに、8匹のソマリハネジネズミを捕捉した。このほか、3匹がジブチ南部アサモと南東部アルタで見つかり、中部のフォレ・ドゥ・ダイ国立公園では1匹の撮影に成功している。

ソマリアやエチオピアにも生息する?

現地調査で確認された計12匹のソマリハネジネズミはいずれも岩場や乾燥帯で生息していた。これらの地域は、開発や農業といった人間活動に適さず、その脅威にさらされづらかったとみられる。研究チームでは、ソマリハネジネズミの生息地が、ジブチだけでなく、隣国のソマリアやエチオピアにわたって広範囲に及ぶのではないかと考察している。

ソマリハネジネズミは、現在、国際自然保護連合(IUCN)の「IUCN絶滅危惧種レッドリスト」で、「その保全状況を適切に査定するためのデータが充分でない」とする「データ不足」に分類されているが、研究チームは、今回の研究成果をふまえて評価を見直し、「低危険種」(絶滅のおそれがなく、近い将来絶滅に瀕する見込みが低い種)に分類するべきだと説いている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中