最新記事

中国

アメリカ猛攻──ファーウェイ排除は成功するか?

2020年7月27日(月)11時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

頼みとするTSMCがファーウェイを切り捨てるとなると、さすがのファーウェイも大きなダメージを受けるだろう。

そこで中国政府は中国のファウンドリ最大手であるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation =中芯国際集成電路製造)に重点を置き、TSMCを代替させるつもりだ。SMICの2020年における調達額はグループ全体で1兆円規模にのぼる。

7月16日、SMICは上海証券取引所の中国版ナスダックとされる科創板(科学技術イノベーション・ボード=STAR)市場に上場し、246%高で取引を開始した。

ただ、SMICの技術はTSMCの2世代ほどは遅れており、どんなに中国政府が投資しても限界があるとも言えるが、しかし上場後に順調に資金調達が進めば、技術革新への好循環が生まれ、TSMCを埋め合わせる可能性がゼロではないかもしれない(詳細は8月初旬出版の『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』)。

台湾としては、ひょっとしたらトランプ政権が「一つの中国」を否定して、「中華民国」を復活させてくれるかもしれないという、淡い夢を描いている。

そうはさせまじと、中国は第一列島線を固める尖閣諸島への侵犯を繰り返している。

万一にも台湾が独立を叫ぶようなことがあったら、2005年に全人代で制定した「反国家分裂法」が火を噴く。中国がそのようなことをすればアメリカが黙っていない。

軍事力においてアメリカにはとても勝てない中国はしかし、コロナで打撃を受けている米国の国力や、白人警官による黒人男性殺害に対するトランプの言動に激怒したアメリカ軍部がトランプに反旗を翻している現状を睨みながら行動しているのである。

ファーウェイを巡るヨーロッパの動きから、日本の足元である東アジアの風雲が見えてくることに注目したい。

なお、つい先日発表されたワシントンの「戦略国際問題研究所」による調査報告書「日本における中国の影響力」には、「日本でのコロナウイルス感染拡大は安倍政権が習近平国賓来訪の計画のために中国側に忖度をしたことが最大要因になった」という結論を導く内容が盛り込まれているそうだ

日本の一国民として、この事実からも目を背けてはならないだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

Endo_Tahara_book.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(実業之日本社、8月初旬出版)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中