中国より株を上げた「台湾マスク外交」──もはや捨て駒ではない
“MASK DIPLOMACY” A BOOST FOR TAIWAN
感染者の増加に伴い、トランプ政権は中国製の医療用品の関税をこっそり免除したが、不十分な措置だし、時期も遅過ぎた。
一方、初動の遅れや透明性の欠如で批判の嵐にさらされた中国は汚名返上に躍起になった。欧米諸国など感染拡大に苦しむ国々に、アメリカよりも強力な支援ができるとアピール。医療機器やPPE、医薬品をヨーロッパ中に送った。
「コロナ危機に比較的うまく対応できた中国は、それを利用して、アメリカが国際社会で全く指導力を発揮していない時期に、世界中でソフトパワーを発揮し、一気に影響力を高めようとした」と、米シンクタンク、外交問題評議会のジョシュア・カーランジック上級研究員は言う。
相手国が感謝したかどうかはさておき、欧州向けには精力的に人道援助プロパガンダを行った中国だが、アメリカにはそんな太っ腹ぶりは見せなかった。むしろトランプ政権の「悪行」を懲らしめるムチとしてマスクの輸出規制を利用しようとした。中国政府系メディア・環球時報の記事は、米政府が中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)製品を排除するなら、中国企業は「アメリカが喉から手が出るほど欲しがっているマスクの輸出を止めるかもしれない」と論じた。
もっとも医療用品の輸出規制を打ち出したのは中国だけではない。独立監視機関のグローバル・トレード・アラートによると、3月下旬時点では54カ国・地域が新型コロナウイルス対策の医療用品や医薬品の輸出を規制していた。アメリカは中国に代わる主要な供給国としてメキシコを頼りにしたが、メキシコも感染状況がさらに悪化すれば対米輸出を控える可能性がある。
そんななかで台湾がマスク外交を展開すれば、単に経済的なメリットがあるだけではない。台湾は長年、対米関係を強化し、武力のみならずソフトパワーでも中国の脅威に対抗しようと努めてきた。
捨て駒の地位を脱した台湾
一部の中国企業は供給不足に付け込んで荒稼ぎしようとしたらしく、図らずも中国のマスク外交でそれが露呈した。中国製の医療用品・機器の品質に一部の国々が疑問の声を上げたのだ。オランダは中国製マスクの品質が検査で基準を満たしていないことを確認。大量に回収し、残りの出荷を停止した。スペインやトルコなどは、中国企業から調達した新型コロナウイルスの迅速検査キットの不具合に気付き、大量に返品したり廃棄したりする羽目になった。
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