中国より株を上げた「台湾マスク外交」──もはや捨て駒ではない
“MASK DIPLOMACY” A BOOST FOR TAIWAN
こうした状況は、アメリカの後押しを受けた台湾にとっては、国際的な立場を強化できる絶好のチャンスとなる。とりわけWHO(世界保健機関)へのオブザーバー参加には期待が高まった。
WHOに加盟できるのは国連の加盟国だけで、中国の圧力で台湾は国連加盟を認められていないため、WHOからも排除されている。ただ、過去にはオブザーバー参加が認められていて、パンデミックをきっかけに台湾の参加を認める機運が高まった。カナダ、欧州各国、日本、アメリカが支持したが、中国が頑強に抵抗。今年5月の年次総会では台湾のオブザーバー参加は見送られた。
トランプ政権は歴代の米政権の中でも最も台湾寄りともみられ、以前から米台関係は良好だったが、コロナ危機でさらに絆が深まった。
米中の緊張がエスカレートするなか、ドナルド・トランプ米大統領は3月末、連邦議会が可決した「台北法案」に署名。米台の経済関係を強化し、台湾の国際参加を支援する同法の成立は、台湾が国際社会の一員として受け入れられることをアメリカは支持するという明確なメッセージともなる。
パンデミックを克服するには国際協調が不可欠だが、残念ながら米中対立がそれを妨げている。そうしたなかで事態打開の鍵を握るのが発信力を増した台湾の存在だ。
もはや台湾は米中の頭越し外交に翻弄される、ただの捨て駒ではない。
<2020年7月21日号「台湾の力量」特集より>
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