最新記事

2020米大統領選

前回選挙で成功した「集会戦術」に執着するトランプ 世論と合わず「空回り」

2020年7月15日(水)10時47分

11月の米大統領選に向けて、トランプ氏は支持率の低下や幾つもの国家的な危機に直面しながらも、誇張的で乱暴な言い回しを駆使する集会を相変わらず選挙戦の主な手段としている。写真は6月20日、オクラホマ州タルサで撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

11月の米大統領選に向けて、トランプ氏は支持率の低下や幾つもの国家的な危機に直面しながらも、誇張的で乱暴な言い回しを駆使する集会を相変わらず選挙戦の主な手段としている。だが2016年の前回選挙後に、米国では多くの状況が変わったのだ。

米国では新型コロナウイルス感染症の死者が13万人を超え、感染対策としてロックダウン(封鎖)が実施された結果、経済は奈落の底に沈んだ。また5月に黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、人種差別や警察の暴力に対する抗議デモが全米に広がった。トランプ氏はこれらの事態にうまく対処できていない。

それでもトランプ氏は、独立記念日前夜の3日にサウスダコタ州ラシュモア山の国立記念碑のふもとで行った集会に出席した7500人が、全米的な抗議デモ参加者を批判する同氏を強く支持したことに気分を良くしたもようだ。あるアドバイザーは、同氏が帰りの大統領専用機の中で、側近らにこうしたイベントをもっと開催して、メッセージを伝えて回りたいと語ったと明らかにした。

ただトランプ氏陣営は10日、ニューハンプシャー州で11日夜に予定していた集会の延期を発表した。同州は16年の選挙で民主党候補のヒラリー・クリントン氏に敗れた激戦区。ホワイトハウスは、熱帯暴風雨の接近を理由に挙げたが、雨は11日午後までに州内のほとんどの地域で上がるとの予想が出ていた。

これに先立ち、6月にオクラホマ州タルサで開いたトランプ氏の集会では、空席が目立っていた。また地元の公衆衛生当局者は8日、この集会は同州の新型コロナ新規感染者数増加につながった公算が大きいと指摘していた。

共和党内でも、トランプ氏が強固な支持層にばかり堂々とアピールする姿勢は、穏健派や無党派層を離反させ、民主党の候補指名を確定させているバイデン前副大統領に11月の本選で大敗しかねないと心配する声が出ている。

しかし、複数の関係者によると、トランプ氏は自身の直感に従い、周囲の助言を受け付けない。先のアドバイザーによると、「怒り狂った暴徒」と「過激な左派」と対決する態度こそが有権者に有効なのだ、とトランプ氏は確信している。前回の勝利につながった「法と秩序」「米国第一」「無法状態の阻止」といったキーワードに回帰したがっているという。


【関連記事】
・東京都、14日の新型コロナ新規感染143人 感染最少の5月23日以降累計3000人突破
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナの起源は7年前の中国雲南省の銅山か、武漢研究所が保管
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中