最新記事

国家安全法

豪州も中国に反抗、ファイブアイズが香港市民を救う?

Five Eyes Nations Draw Fury From China by Pushing Back on Hong Kong Law

2020年7月10日(金)15時20分
デービッド・ブレナン

コロナ調査でも中国の「脅しには屈しない」と強硬だったモリソン豪首相(写真は2月28日、シドニー) Loren Elliott-REUTERS

<英語圏5カ国が次々と香港国家安全維持法への対抗措置を発表、中国はどこまで「内政干渉」ディフェンスを貫けるか>

中国は、「香港国家安全維持法」への抵抗措置として香港市民を自国が「避難先」として受け入れる計画を発表したオーストラリアを激しく非難した。

オーストラリアのスコット・モリソン首相は7月9日、同国内に滞在している香港市民のビザ(査証)を延長すると発表し、彼らの永住権取得にも道を開いた。帰国した際の迫害を恐れて亡命を希望する人々のための新たな特別人道ビザの創設までは行っていないが、約1万人の香港市民がビザ延長の対象になるとみられている。

モリソンはまた、カナダと同様、香港との間で結んでいた犯罪人引き渡し条約の停止を発表。香港国家安全維持法は一国二制度の「状況を根本的に変えるもの」だと述べた。

同法については香港の民主活動家たちが、香港に保障されている一定の政治的自由を奪うものだと主張。これに同調する民主主義諸国が抵抗措置を取っている。

在オーストラリア中国大使館は9日、モリソンの発表について「内政干渉だ」と非難した。中国側は、香港国家安全維持法や香港でのその他の人権侵害を批判する諸外国に対して、繰り返しこの言葉を使って反発している。

同大使館の報道官は、中国政府は「オーストラリア政府が発表した根拠のない批判と措置を強く非難し、これに反対する」と声明で述べ、さらにこう続けた。「オーストラリアは『外国による干渉』には反対だと騒ぎ立ててきた。だが彼らは、香港について無責任な発言を行うことで、中国に対してあからさまな内政干渉を行ってきた。これはまったくの偽善であり二重基準だ」

「怪我をするぞ」と警告

こう述べた上で同報道官は、オーストラリアに対して「香港問題や中国の国内問題について、いかなる口実や方法で行っている干渉も即座にやめる」よう求め、「さもなくば、自分で持ち上げた岩で自分の足を怪我することになるだろう」と警告した。

香港国家安全維持法は(香港での)広い定義での政権転覆、扇動、テロ行為と外国勢力との共謀を犯罪行為と定めている。事実上、中国共産党に対する批判や抵抗を犯罪と見なすもので、同法に違反した者は中国の法廷で裁かれて終身刑を科されるおそれもある。

イギリスが香港返還(1997年)時に中国と交わした合意文書「中英共同宣言」では、香港は少なくとも2047年までは、それまでの市場経済と生活様式を維持すると定めていた。これによって香港には、本土よりも大きな政治的自由が保障されてきた。

だが香港国家安全維持法に反対の人々は、同法が「一国二制度」として知られるようになったこの合意を骨抜きにしたと批判している。中国政府はそうした主張を一蹴し、同法は香港の安定を維持し、諸外国からの干渉を防ぐために必要だと主張している。

同法に対する世界的な対抗措置の先頭に立っているのが、英語圏5カ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアとニュージーランド)で構成する機密情報共有枠組みの「ファイブアイズ」だ。

<参考記事>「香港国家安全法」に反対の立場を取ったトルドーに中国が報復誓う
<参考記事>中国、世界保健総会の新型コロナ調査決議案に激怒「オーストラリアの主張はジョーク」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中