最新記事

感染症

ブラジルのボルソナロ、新型コロナに感染 リスクなお軽視

2020年7月8日(水)11時13分

ブラジルのボルソナロ大統領は7日、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たと明らかにした。発熱の症状があるものの、健康状態は良好という。ブラジリアで6月撮影(2020年 ロイター/ADRIANO MACHADO)

[サンパウロ/ブラジリア 7日 ロイター] - ブラジルのボルソナロ大統領は7日、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たと明らかにした。発熱の症状があるものの、健康状態は良好という。同国では新型コロナ感染者が160万人超、死者が6万6000人超に達しているが、ボルソナロ大統領は新型コロナの脅威を軽視し、専門家の提言を否定していた。

ボルソナロ大統領はこの日の会見でも、健康リスクを重要視しない姿勢を示し、「検査を受けていなければ、分からなかっただろうが、陽性だった」と語った。

その上で、「5日に具合が悪くなり、6日に悪化した。疲労感や筋肉の痛みがあり、熱が38度に達した」と説明した。その後、マスクを外して笑顔を見せながら「気分は良好で落ち着いている」とアピールする場面もあった。

抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」を服用しているとも述べた。同薬はトランプ米大統領がコロナ治療薬として有望と主張していたが、有効性は証明されていない。

ボルソナロ大統領は、新型コロナ感染症のリスクが誇張されているとの主張を繰り返し、ほとんどのブラジル国民は心配無用だとした。

また、ビデオ会議形式で職務を続ける意向を示した。

米ホワイトハウスの報道官は、ボルソナロ大統領の健康状態に関して「早期の回復を願っている」と述べた。

大統領の感染を受け、濃厚接触者の追跡と検査が実施されるとみられる。大統領はここ数日間にゲジス経済相、バンコ・ブラデスコの会長、エンブラエルの最高経営責任者(CEO)らと会談している。

ゲジス経済相に感染の兆候はなく、先週の検査では陰性だったが、今後4日以内に新たに検査を受ける予定だという。

また先週末は複数のイベントに参加し、4日の米独立記念日には米国のチャップマン駐ブラジル大使とも接触する機会があった。この時撮影された写真によると、マスクは着用していなかった。

ブラジリアの米国大使館はツイッターで、チャップマン大使が4日にボルソナロ大統領や息子のエドゥアルド・ボルソナロ下院議員、閣僚5人らと昼食を共にしたと明らかにした。大使は検査で陰性だったものの、引き続き隔離措置を取るという。

世界保健機関(WHO)の米州地域事務局、汎米保健機構(PAHO)の伝染病担当責任者マルコス・エスピナル氏は、ボルソナロ大統領の「早期回復」を願うとした上で、「(大統領の感染は)このウイルスが予測不可能で、人種や地位にかかわらず、感染する可能性があるというメッセージを発している」と指摘。ブラジルで社会的距離の確保とマスク利用の一段の強化が必要であることを示していると述べた。

世界の政府要人ではこれまでに英国のジョンソン首相、ホンジュラスのエルナンデス大統領も新型コロナに感染している。

大統領は公共の場でマスクを着用するルールをたびたび無視し、裁判所にマスク着用を命じられた後もその姿勢は変わらなかった。

3月の国民向けテレビ演説では「もしわたしが感染しても、心配はしない。せいぜい軽いインフルエンザか風邪かのようなものだろう」と述べていた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルーマニア大統領選、NATO懐疑派と左派首相が接戦

ワールド

原油先物2週間ぶり高値近辺、ロシア・イラン巡る緊張

ワールド

WHO、エムポックスの緊急事態を継続 感染者増加や

ワールド

米最高裁がフェイスブックの異議棄却、会員情報流出巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中