母親の手記「真の正義を手にするまで私は決して諦めない」
A MOTHER’S PLEA
息子エリックの死以来、カー(中央)は抗議運動を牽引してきた SPENCER PLATT/GETTY IMAGES
<今回の黒人差別反対運動の発端となったジョージ・フロイド事件の前にも、同じように警察の暴力で息子を失った女性がいた。その痛みと願いを本誌に寄稿。「Black Lives Matter」特集より>
私がジョージ・フロイドのことを知ったのは事件の翌朝だった。電話してきた記者から、彼がどのように亡くなったのかを聞いたとき、たちまち心に強烈な痛みを感じた。
思い出したのは2014年7月17日のことだ。その日、私の息子エリック・ガーナーは警官に腕で首を絞め付けられ、それが原因で死亡した。
涙があふれた。エリックに起きたことが、そのまま繰り返されたかのようだった。亡くなった男性が、息子と同じく「息ができない」と言ったと知ると、不気味な感覚に襲われた。彼が息をできなかった理由を知らされると、何もかもがいっぺんによみがえってきた。
フロイドは手錠を掛けられて地面に横たわった状態で、警官に喉元を膝で押さえ付けられた。ほかの警官3人が立って見ていた。エリックのように、彼は助けてくれと懇願した。到底理解できない出来事だった。
私にできたのはフロイドの遺族に胸の内を明かし、心からの同情と哀悼の気持ちを伝えることだけだった。彼らがどう感じているか、私には分かった。わずか6年前に同じ感情を味わったのだから。彼らを抱き締めることができたらと思った。彼らはあまりにも大きな悲しみと痛み、怒りを抱えている。
フロイドの遺族には、戦わなければ駄目だと伝えた。楽な戦いではないが、それでも彼らは諦めないと分かっている。私も諦めたりはしない。
記者などが今、私のコメントを欲しがる理由は理解できる。だがニュースになり、抗議活動を引き起こしている事件の犠牲者は氷山の一角だ。ほかにも大勢いるが、誰も証明できず、誰も公表しようとしなかった。
私たちアフリカ系アメリカ人の母親は日々、このトラウマと向き合っている。私たちの子供が暴行を受け、追われ、殺されている。ミネソタ州ミネアポリスで起きたフロイドの事件は、幸いにも撮影されていた。そうでないケースはいくつもある。
私たちは油断してはならない。どれほど苦しい戦いでも、続けなければならない。私たちの地元が事件の現場になっている。私たちを殺し、脅かして残忍に扱っても、大半の場合はなかったことにされる。だが私たちが力を合わせ、私たちは逃げないと知らしめれば、彼らはいずれ注意を払うだろう。