インドネシア、イスラム過激派壊滅作戦を延長 長期化で民間人を誤認殺害との報道も
秘密軍事訓練基地の存在
中スラウェシ州ポソを中心とする地域を活動拠点とするMITだが、かねてから山間部に秘密軍事訓練基地を設け、フィリピン南部のイスラム過激派メンバーや東南アジア、中東、ウイグルなどからテロリストが集結して実弾射撃や爆弾製造・爆破などの訓練を行っていた。何度か治安部隊に発見されて攻撃を受けたものの、その後別の場所に新たな基地を設置するなど、現在もそうした秘密訓練施設が点在しているとされる。
しかし、今年に入ってからの治安部隊による殲滅作戦強化からMITは活動拠点が限定され、新たなメンバー獲得も困難に直面しているという。そのため海外の組織やメンバーとの"連携"に活路を見出そうと画策しているとの分析もある。
こうしたことからジョコ・ウィドド政権は「テロへの警戒は決して怠らないように」との号令の下、山間部の訓練基地の発見、捜索や指導者アリ・カロラ容疑者を筆頭とする14人の主要指名容疑者の逮捕、さらに外国人メンバーの摘発、海路によるフィリピンとの往来の警戒監視などを強化している。
インドネシアにとってテロは依然として「今そこにある危機」にほかならず「コロナとの闘い」と同じく最優先課題となっている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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