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遺伝子ミトコンドリアDNAの新たな編集技術が世界で初めて開発される
ミトコンドリアDNAの新たな編集技術が開発された...... wir0mani-iStock
<サチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学などの研究チームは、ミトコンドリアDNAを編集する新たな手法を開発した......>
細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアは「ミトコンドリアDNA(mtDNA)」と呼ばれる独自のDNAを有する。「CRISPR」は、二重らせんを形成する二本鎖DNAを切断してゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入することで、細胞核でのDNA編集を早く正確に行うことができる画期的な遺伝子編集技術であるが、CRISPRにおいて不可欠な「ガイドRNA(gRNA)」がミトコンドリア膜を通過できないため、ミトコンドリアDNAの編集に用いることはできない。
「CRISPRやガイドRNAによらない遺伝子編集が可能に」
米マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学が共同で運営する研究機関「ブロード研究所」、ワシントン大学らの共同研究チームは、ミトコンドリアDNAを編集する新たな手法を開発し、2020年7月8日、学術雑誌「ネイチャー」でその研究成果を発表した。
まず、ワシントン大学の研究チームは、日和見病原菌の一種「バークホルデリア・セパシア」が生成する毒性タンパク質に着目した。「DddA」と呼ばれるこの毒性タンパク質は、二本鎖DNAのシトシンをウラシルに変化させて、他の細菌を殺す。研究チームは「二本鎖DNAに作用するDddAの特性を転用することで、CRISPRやガイドRNAによらない遺伝子編集が可能となるのではないか」との仮説を立てた。
ブロード研究所の研究チームは、ワシントン大学の研究チームが示した仮説をもとに、細胞を損傷することなくDNAを編集できるようにするため、DddAの毒性を軽減させる手法を考案。DddAを二分割して不活化させ、これらが組み合わさったときにのみDNAを編集できるようにした。
二分割されたDddAが組み合ってDNAに結合すると、シトシンがウラシルに変化し、最終的にはDNAの塩基配列を編集して「シトシン(C)」と「グアニン(G)」の対を「アデニン(A)」と「チミン(T)」の対に変換する仕組みだ。研究チームでは、この手法を「DdCBE (DddA派生シトシンベース編集ツール)」と名付けている。ヒト細胞のミトコンドリアDNAにある5つの遺伝子を用いて実験したところ、DdCBEによってミトコンドリアDNAの50%で正確に編集できた。
ミトコンドリア以外の遺伝子編集にも応用
DddAを活用したDdCBEは、ミトコンドリアの生物学的、遺伝学的な謎の解明に役立つのはもちろん、ミトコンドリアの異常によって起こる「ミトコンドリア病」などの治療法の研究に道をひらくものとして期待がよせられている。また、ガイドRNAを必要としないDdCBEは、ミトコンドリア以外の遺伝子編集にも応用できるのではないかとみられている。