米中衝突を誘発する「7つの火種」とは
U.S.-China Tension Everywhere
■新型コロナウイルス
米中間の緊張は引き続き新型コロナウイルス流行への国際社会の対応に影を落としている。トランプはかねてから中国寄りだと非難していたWHO(世界保健機関)からの脱退を7月6日付で正式通知、手続きに入った(気候変動に関するパリ協定と同じく脱退は正式通知から1年後なので、実現するかどうかは11月の米大統領選の結果次第だ)。
WHOは中国に専門家らを派遣してウイルスの発生源を調査している。6月の報道によれば、新型コロナの流行当初、表向きは中国の対応を称賛していたが、実際は中国からの情報の遅れや不足にいら立っていたようだ。
一方、トランプ政権側はむちゃくちゃな主張をして中国起源説を正当化している。対中強硬派の側近は新型コロナウイルスが夏の暑さでも消えないのは中国の生物兵器である証拠と示唆。トランプ自身も選挙集会で(カンフーとインフルエンザを合わせた)「カンフル」という人種差別的表現を使い続けている。
■軍縮
トランプ政権はロシアとの新戦略兵器削減条約(START)の延長交渉に中国も加わるよう求めているが、中国は拒否。中国外務省は7月8日、「アメリカが(核兵器保有数を)中国と同水準に削減する」なら参加すると皮肉った(保有核弾頭数は米ロ各6000発超に対し、中国は推定290発)。一方で中国はイランと経済・安全保障のパートナーシップ協定を交渉中とも報じられている。
いずれも新型コロナと目前に迫った米大統領選がもたらす一時的な緊迫と考えたくなる。民主党のジョー・バイデン陣営はトランプ政権の対中政策を「発言は強硬で行動は弱腰」と批判。バイデン政権が誕生すれば口ばかりの好戦的な姿勢や陰謀論は影を潜めるだろう。だが新疆のジェノサイドや中国と周辺国の領有権争いなどの問題は依然残る(習は任期制限撤廃により終身国家主席も夢ではない)。
「新冷戦」の現実味は増しており、当分消えそうにない。
©2020 The Slate Group
<本誌2020年7月28日号掲載>
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