最新記事

米中関係

米中衝突を誘発する「7つの火種」とは

U.S.-China Tension Everywhere

2020年7月25日(土)14時20分
ジョシュア・キーティング

沿岸海域で軍事演習を行う中国海軍の船団(18年4月) REUTERS

<ウイグル、南シナ海、香港と様々な問題が同時発生、最新の地政学的リスクから見る新冷戦の現実味>

米中関係の緊張は動画共有アプリのTikTok(ティックトック)やNBAにまで及んでいるが、ここ数週間は特に、さまざまな領域で同時多発的に問題が起きている。

2つの大国は何かのきっかけで敵意が燃え上がったというより、多数の地政学的展開の背後にある力学が関係しているようだ。その地政学的な問題をいくつか見ていこう。

新疆ウイグル自治区

中国政府は7月13日、マルコ・ルビオ米上院議員、テッド・クルーズ米上院議員、クリス・スミス米下院議員、信教の自由を担当する特別大使のサム・ブラウンバックに制裁を科すと表明した。彼らは中国政府と人権問題を強く批判している。

9日に米トランプ政権は、新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐり、地元当局の高官4人に制裁を科すと発表。中国側は対抗措置を取ると示唆していた。

中国政府は、新疆の再教育キャンプや刑務所でウイグル人など100万人以上の少数民族を拘束しており、国際社会から非難されている。さらに、少数民族に不妊手術や中絶を強要していることは「ジェノサイド(大量虐殺)」に当たると、米シンクタンクの報告書が指摘している。

もっとも、ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録によれば、ドナルド・トランプ米大統領は昨年、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に、強制収容所の建設は「当然のこと」だと同意の意思を伝えたという。

南シナ海

マイク・ポンペオ米国務長官は7月13日、南シナ海における中国の領有権主張は大半が「違法」だとする声明を発表した。中国は、南シナ海のほぼ全域に9本の領海線「九段線」を引いて領有権を主張し、人工島を造成するなど実効支配を進めている。

アメリカは以前から中国の全体的な立場に異議を唱えてきたが、今回は特定の領有権主張を否定している。

「アメリカが軍事、外交、その他の手段を通じて中国の主張に異議を唱える姿勢が、より厳しくなるという前兆になり得る」と、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は述べている。ポンペオの声明の翌日に米海軍のミサイル駆逐艦は「航行の自由」作戦を実施。中国が領有権を主張するスプラトリー(南沙)諸島の周辺海域を通過した。

【関連記事】限界超えた米中「新冷戦」、コロナ後の和解は考えられない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中