最新記事

香港の挽歌

香港で次に起きる「6つの悪夢」 ネット、宗教、メディア...

FAREWELL TO HONG KONG’S FREEDOM

2020年7月9日(木)06時50分
サラ・クック(フリーダム・ハウス上級アナリスト)

4. デジタル空間の表現への抑圧

新法を使えば、インターネットの自由も制限できる。

香港の立法会議員で情報技術産業界を代表するチャールズ・モクによれば、新法の下で「プロバイダーや通信事業者、ソーシャルメディアやデータセンターの管理者」は、ユーザーの制作するコンテンツについてより大きな責任を問われる可能性がある。

しかも管理者は、ユーザーのデータを当局に提供する義務を課されるかもしれない。モクは、自治権を持つマカオで2009年に独自の国家安全法を施行された後、新たなサイバーセキュリティー法が制定され、SIMカードの実名登録など中国本土と同様の規制が課されたと指摘している。

magSR20200709farewelltofreedom-chart.png

5. 芸術・学術的表現の規制

香港の芸術界では、政治的メッセージを込めた作品が盛んに制作されている。市内には民主化デモ参加者をモチーフにした彫像や、林鄭行政長官、習近平(国家主席、シー・チンピン)らを嘲笑する壁画などが頻繁に出現する。

こうしたアートは中国本土では規制の対象だ。香港のアーティストは、自分たちの作品が「国家分裂」「政府転覆」のレッテルを貼られ、訴追されるのではないかと危惧している。

香港の学問の自由はここ数年、後退を見せてきた。香港の研究者らは、中国政府が新法の下で香港の大学への抑圧を強め、これまで築いてきた国際的評価を低下させることを懸念している。

6. 宗教団体の弾圧

中国本土で抑圧の対象になる宗教団体も、香港では比較的自由に活動してきた。デモ参加者を含め、多くの市民はプロテスタントかカトリック教徒だ。数は少ないが、中国で禁止されている法輪功の信者もいる。

だが今後は、以下に挙げる全てのケースが国家安全維持法違反と見なされる恐れがある。

【関連記事】香港危機:台湾の蔡英文がアジアの民主主義を救う

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中