2度目のロックダウンで米企業10兆ドルの「債務爆弾」が破裂する
A $10 Trillion Corporate Debt Bomb is Waiting to Explode the U.S. Economy
米証券市場はまだ新型コロナ第2波を織り込んでいないが時間の問題か(ニューヨーク証券取引所) Lucas Jackson-REUTERS
<コロナ前から過剰債務が懸念されていた米企業。FRBと米政府が行った巨額支援策も借金体質に拍車をかけた。今や資金繰りはパンク寸前だ>
IMFは今年1月、新型コロナウイルスのパンデミックが始まる前から警告を発していた。アメリカをはじめ主要な経済大国は、世界経済の減速に対して十分な備えができていないと──。
この半年間にアメリカで起きたこと、つまりコロナ禍による大量失業と相次ぐ企業倒産を振り返ると、その崩壊の規模とスピードは「減速」などという言葉ではとても言い尽くせない。
しかもパンデミックはもう1つの爆弾をアメリカ経済に投げつけようとしている。その爆弾とは、米企業の抱える膨大な債務だ。
アメリカ経済は長年、借金に支えられてきた。1980年代以降、政府と企業、消費者の抱える債務残高はGDPの2倍を上回ってきた。2008年の金融危機後に金利が記録的に低下したため、債務はさらに大幅に膨れ上がった。
米企業の社債発行残高は10兆ドルを超え、アメリカの2019年のGDP21.5兆ドルの半分近くに上っている。提携による融資や中小企業向け融資など、他の形態の債務も加えると、企業の債務残高はなんと17兆ドルに上ると、フィナンシャル・タイムズは今月伝えた。
FRBがテコ入れしても
「債務の増加により、経済がますます不安定になり、アメリカはコロナ危機のようなショックに弱い体質になっていた」と、ニューヨークのアデルフィ大学のロバート・ゴールドバーグ准教授(専門は金融学、経済学)は本誌に語った。
それでなくても膨大だった米企業の債務はここ数カ月、「100年に1度の危機」でさらに大きく膨れ上がった。
3月には州や市当局がロックダウン(都市封鎖)を発令。社債市場は事実上取引停止の状態に陥り、新たな社債の発行、特に非投資適格級債(ジャンク債)の発行による資金調達はほぼ不可能になった。
債券市場を活性化するため、FRB(米連邦準備理事会)は社債市場への介入を宣言。流動性を改善するため、7500億ドルの社債を購入した。
加えて中小企業に対する支援を開始、6000億ドルの融資枠を設けて、資金調達が困難な中堅・中小企業の支援に乗り出した。企業の倒産を防ぐこの施策で、債務はさらに積み上がった。
FRBの支援策は、主に投資適格級の債券市場のテコ入れを狙ったものだが、この介入によりここ数カ月ジャンク債の発行が「急増している」と、マサチューセッツ州のベントリー大学のデービッド・ガリー教授(経済学)は本誌に話した。
短期的に資金調達ができても、「いま多額の債務を抱えている企業が、長期的に生き残れる保証はない。旅行・レジャー産業はなおさらだ」
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