最新記事

日本政治

山本太郎の胸のうち「少なくとも自分は、小池さんに一番迫れる候補」

More Than a Zero Chance of Winning

2020年6月30日(火)17時30分
森達也(作家、映画監督)

この国の政治状況における最大の問題点は何か。もちろん無数にある。でも最大の要因は、国民一人一人の主権者意識が希薄なことだと僕は思っている。だから政治に関心を持たない。選挙に行かない。抗議しない。主張しない。ひとつ事例を挙げる。英語で納税者はtaxpayer。つまり税は支払う(pay)もの。だから相応の見返りを求める。でも日本語で税は納めるもの。つまり年貢だ。お上という意識もここに重なる。これが日本の政治風土の根底にある。

でも新型コロナウイルスの流行というかつてない事態を迎え、一人一人の意識が変わりつつある。そしてこの状況がさらに進むのなら、ずっと自立できなかった主権者意識が大きく変わるかもしれない。

「もちろん、こういう危機的な状況で政治に関心を持つことは決して珍しいことではない。私自身もそうです。福島第一原発で変わりました。......でも震災や原発事故はやはり一過性だし、地域で温度差もありました。結局は自分のこととして捉える人は多くなかった。でも今回は違います。決して人ごとではない」

「出馬宣言が遅れた理由は?」

「調整が遅れました。宇都宮さんは真っすぐな方ですから、一本化は無理だと思っていた。行くこともできるし戻ることもできる。都知事選について自分はずっとそのスタンスでした。気持ちを固めた理由は、コロナ後に出会った新しいホームレスの人たちです」

「新しいホームレス?」

「明らかに増えています。多くの人が本当に困窮しています。ならば自分に何ができるのか。今は議員じゃないから、炊き出し支援やボランティアくらいしかできない。衆院選まで何もしないのか。いや、それはあり得ない」

弱点は同時に強みにも

気持ちは分かる。でも戦略としてはどうか。票を食い合うことは回避できない。やはり完全には納得しづらい。

「そもそも当選できる確率はどのくらいあるの?」

この質問に対して、山本はしばらく考え込んだ。「......少なくとも自分は、小池さんに一番迫れる候補者だと思っています。でも確率かあ。これはみなさん次第で、ふたを開けなければ分からない。僕には伸びしろしかないから」

「衆院選前にれいわの知名度を上げるための出馬だとの見方については?」

「選挙って疲弊するんです。候補者だけではなくスタッフもみんな。もしも秋に衆院選があるなら、今この選挙で疲弊したくないです。まあ今も、何で出馬するのかと時おり怒られるけれど、でもそもそも政治をやろうと思った理由は変わっていないから」

「困っている人を見捨てたくない、ということ?」

「はい。そのためにできることをやりたい。当選の可能性は低くてもゼロではない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明

ビジネス

米2月総合PMI、1年5カ月ぶり低水準 トランプ政

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中