最新記事

インド

中国との係争地での軍事衝突、引き下がれないインド政府の事情

2020年6月28日(日)14時20分

圧力の違い

一方のインドでは野党指導者、軍の元司令官や元外交官らが、インド国民の命と領土をモディ氏が守れなかったと批判している。中国製品ボイコットの呼び掛けも多数に上り、国内メディアは隅から隅まで中印の軍事衝突に関連するニュースばかりだ。

中国はインドとの係争地を巡り、1962年の短期的な軍事衝突でインドに屈辱的な思いを与えた。インド側からすれば、中国からの国境紛争の脅威は新型コロナ危機の影を薄くしている。インドでの感染者は40万人を超えたが、なお衰える兆しはないにもかかわらずだ。

シン前首相は、インドはモディ氏を支持はしているが、モディ氏にはそれに応える責任があると訴える。「われわれは歴史的な岐路に立っている。わが政府の決定と行動は、将来の世代が今のわれわれをどう見なすかという点で重大な意味を持つ」と述べた。

アナリストによると、こうした発言によってモディ氏は面目を失わずに譲歩するのが困難になっている。モディ氏はインドを経済的、軍事的な大国にするとの公約を掲げて2014年に首相になった。

しかし、その後のインドは中国に一段と水を空けられた。中国の経済規模はインドの5倍、軍事費の規模は3倍になっている。

コントロール・リスク社は、モディ政権が世論の圧力をなだめるため、中国に対して経済的措置を取る可能性が高いと指摘。インドにとってより強大なライバル国と軍事的にぶつかるリスクは回避するとの見方を示した。

(Yew Lun Tian記者 Sanjeev Miglani記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナに感染して免疫ができたら再度感染することはない?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月モノの貿易赤字、9.6%増の1620億ドル 

ビジネス

アマゾン、関税費用表示との報道を否定 米政権は「敵

ビジネス

米GM、関税の不透明感で通期業績予想を撤回 第1四

ビジネス

米3月求人件数、28.8万件減 解雇も減少し労働市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中