「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告
TOO EARLY TO CALL A WINNER
医療版マーシャルプランを
だが、いくら強いカードを持っていても、使い方を間違えれば、地政学のゲームに負ける可能性はある。幅広い同盟関係や国際機関への関与といった「エース」を捨てる行為は、そうした間違いの1つだ。
厳格過ぎる移民制限も間違いだ。筆者は昔、シンガポールの建国の父リー・クアンユーに、近い将来、中国がアメリカに代わって世界の大国の地位に就くと思うか質問した。リーは「ノー」と答え、その理由として、アメリカには全世界から有能な人材を引き寄せ、多様性と独創性に昇華させる力があると指摘した。一方、中国には強力な漢族ナショナリズムがあるため、このような開放性を確保するのは難しいだろう。
来年にも誕生するかもしれないアメリカの新しい政権は、第2次大戦後の外交政策をヒントに、大規模な新型コロナ援助プログラムを立ち上げるべきだ。いわばマーシャルプラン(欧州復興計画)の医療版である。
こうした2国間または多国間の協力を推進して、ソフトパワーを高める政策を取れば、アメリカは世界における優位を維持できるだろう。その一方で、アメリカが今と同じ政策を取り続ければ、ナショナリスト的なポピュリズムと権威主義への傾斜が一段と加速するだろう。
だが、新型コロナ禍がアメリカと中国の立場を逆転させるような地政学的転機を引き起こすと主張するのは、時期尚早というものだ。
<2020年6月30日号「中国マスク外交」特集より>
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2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?