サザンオールスターズ横浜アリーナ無観客ライブ配信は「ウィズコロナ」の音楽ビジネスを切り開くか?
エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる。写真は千葉市で行われたライブ会場で2009年8月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon )
エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる。ライブの中止が相次ぎ、業界への悪影響は6900億円に及ぶとの試算もある。こうした中、活路として期待されているのがネット配信だ。新たな収益源となり得るのか、人気バンド「サザンオールスターズ」が25日に行う無観客ライブ配信が一つの試金石として注目されている。
大物が乗り出す有料配信
サザンの無観客ライブは、会場の横浜アリーナから8つのメディアを通じて配信される。パソコンやスマートフォンなどのほか、一部のメディアではテレビでも視聴が可能だ。料金は3600円と、昨年のアリーナ公演のチケット代9500円の4割程度に抑えられている。
アリーナの席数は約1万3000だが、ネット配信はテクニカル的な制約を除けばほぼ無限大。収益の一部はコロナの治療や研究に当たる医療機関の支援に充てられるが、単発のイベントとしては「3─4万人が視聴すれば、会場開催と同等の収益が確保できるのではないか」(プロモーター業界関係者)とみられている。
ミュージシャンの矢沢永吉さんも、商品化していない過去のライブ映像を配信する。第1弾は27日で、価格は2800円としている。
いずれも有料とした点がポイントだ。新型コロナの拡大でアーティストのネット配信は増えたが無料が多く、ビジネスとしては成立しにくかった。「成功すれば業界は活気づく。舞台演出を含めたパフォーマンスがオンラインでどのように評価されるかも今後のヒントになる」(イベント関係者)と期待が大きい。
有料のライブ配信は海外が先行しており、成功例もある。韓国では14日、「BTS(防弾少年団)」が無観客ライブを1チケット3万9000ウォン(約3500円)で配信し、107の国・地域から約75万アクセスを集めた。「SUPER JUNIOR」や「東方神起」の5月のライブ配信にも、会場での開催を上回るアクセスがあった。
苦しむ業界、「再起できないリスク」に危機感
ライブエンターテイメント業界は、コロナの流行を受けてライブの中止・延期を余儀なくされている。5月に会見したぴあの矢内廣社長によると、音楽ライブやスポーツの中止・延期の総数は2─5月で19万8000本、入場料金は3600億円消失した。
ぴあ総研は、来年1月までの1年間で中止・延期は43万2000本、入場できない人数はのべ2億2900万人に達すると予想。入場料は19年推計の77%にあたる6900億円が失われるとされ、「完全回復には来年1年くらいはかかるのではないか」(矢内氏)という。感染拡大の第2波や第3波があれば、回復に要する時間はさらに伸びかねない。
ビジネス停滞の長期化で、ライブを支えるスキルやノウハウを持った人材が流出したり廃業したりすることへの懸念も強い。矢内社長は「業界として再び立ち上がれなくなるリスクがある」と危機感を示した。
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