問題を抱える医療制度、貧困、移民......医療ドラマから見えてくる米国のリアル
──メディカル・ドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』
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実話をもとにしたドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』は、アメリカ社会の縮図だ
<ニューヨークで、多くのコロナ感染者を受け入れている病院をモデルとした、ドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』で、アメリカの医療現場のリアルを垣間見る ......>
あらゆる人を受け入れる「命の最後の砦」
新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界各地の医療は逼迫した。しかし捨て身で治療を続ける医療従事者への感謝として、イタリアやスペインでは拍手が沸き上がり、米国ではレディ・ガガさんなどが医療従事者を称えるオンライン・コンサートを行い、東京ではブルーインパルスが都心の空を飛ぶなど、コロナと闘う医療従事者を称賛する動きが世界に広がっている。ただ、医療従事者が実際にどんな環境で働いているのか、私たちには想像することしかできない。
しかしそれを垣間見ることができるのが、ドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』だ。この作品の舞台となる「ニュー・アムステルダム病院」は、実在する米国最古の公立病院「ベルビュー・ホスピタル」をモデルにしている。米国のコロナウイルス震源地と呼ばれているニューヨークで、多くのコロナ感染者を受け入れている病院だ。
ベルビュー・ホスピタルはこれまでにも、2001年に発生した米同時多発テロ事件の被害者や、エボラ出血熱患者の治療にもあたってきた。健康保険の加入状況や支払い能力の有無にかかわらず、すべての人を受け入れる「セーフティネット病院」と呼ばれ、あらゆる患者の"命の最後の砦"となっている。
さまざまな人生を背負った人たちによる現代アメリカの縮図
ドラマは、かつてこの病院で医療ディレクターとして働いた実在の人物エリック・マンハイマーが書いた回顧録『Twelve Patients: Life and Death at Bellevue Hospital』(12人の患者:ベルビュー・ホスピタルでの生と死)をベースにしている。つまり、実話をもとにしたドラマ『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』で描かれるのは、「移民」「人種問題」「宗教」「薬物乱用」「医療制度の問題」「貧困」「老い」など、今の米国の社会が直面する現実的な問題だ。
ドラマでは、ニューヨークという場所柄、人種、経済的ステータス、職業など、米国の縮図といえるありとあらゆる患者が訪れる。不法滞在中で適正な書類を持たない者、テロリストの疑いをかけられている人物、性転換手術を希望するSNSのインフルエンサーなど、さまざまな人生を背負った人たちだ。ベルビュー・ホスピタル同様、病院内には、受刑者を治療する刑務病棟もある。
なかでも、ドラマで頻繁に触れられるのが、米国の医療制度の問題だ。米国は国民皆保険を導入しておらず、中間層以上は民間の医療保険に入っている。しかし保険料を負担できない貧困層では加入していない人が多く、医療にかかった場合は全額負担を余儀なくされる。ドラマには、「保険に入っていない」と言って、治療を受けたがらない人が幾度となく登場する。