限界超えた米中「新冷戦」、コロナ後の和解は考えられない
‘THE ERA OF HOPE IS OVER’
だがそれも、バイデンが大統領選に勝てばの話だ。
米中貿易交渉で中国は、トランプが求める国有企業への補助金停止に応じず、「中国製造2025」で掲げた目標を取り下げる姿勢も見せなかった。パンデミック後に、経済交渉で米中が和解に至るシナリオはまず考えられない。
インドはこれまで米中間でうまく立ち回ろうとしてきたが、アメリカの対中政策では軍事的にも地政学的にもインドの立ち位置が重要になる。11月の米大統領選で誰が勝っても、アメリカはトランプ政権のアジア政策である「自由で開かれたインド太平洋」の枠組みにより強力にインドを取り込もうとするだろう。
アジアでも欧州でも、米政府が同盟国と連携を強化し、対中共同戦線を構築できる機運はかつてなく高まっていると、ランド研究所のスコット・ハロルドは言う。「私たちが接触した限り、どの国も(今の中国に)満足していなかった」
「熱い戦争」だけは避けたい
米主導の共同戦線を構築するためには、米政府は同盟国に一貫性のある明確なメッセージを出す必要がある。中国とのイデオロギー競争が激化するなか、「自由な国際秩序を擁護する国々、同じ志を持つ民主主義国家」の団結を訴えれば、同盟国は「自分たちの利益と価値観を守るために攻勢に出るはずだ」と、ハロルドは言う。
激化する米中の覇権争いでは情報戦がカギを握る。この点ではトランプ政権の成績はパッとしない。トランプは習との貿易交渉で成果を上げるのに必死で、香港の民主化運動に支持を表明することも怠った。パンデミックの勃発後は、特に途上国に向けたプロパガンダ戦で、アメリカは中国に出し抜かれている。中国共産党は「中国モデルを模範にせよ」とばかり、習近平の感染封じ込めの手腕を喧伝し、成果を上げている。
とはいえ、アメリカの次期大統領には素晴らしいロールモデルがいる。米ソの冷戦時代を通じて歴代の米大統領は自由主義陣営の価値観を雄弁に語ってきたが、ベルリンの壁崩壊の1年ほど前にホワイトハウスを去ったロナルド・レーガンはとりわけ説得力のある自由の守り手だった。
次の米政権が中国の挑む勝負を受けて立つなら、私たちはその手並みを見守ることになる。アメリカの影響下で中国が軌道修正するという読みは甘かった。次期大統領はそんな幻想にとらわれず、同盟国と共に強力なライバルを巧みに御しつつ共存の道を探らねばならない。
ミッションは明快だ。21世紀の冷戦を果敢に戦うこと。ただし、決して「熱い戦争」にしないことだ。
<2020年6月16日号「米中新冷戦2020」特集より>
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2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」