最新記事

米中新冷戦2020

限界超えた米中「新冷戦」、コロナ後の和解は考えられない

‘THE ERA OF HOPE IS OVER’

2020年6月15日(月)06時55分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

ただ、米中デカップリングのコストはしばしば過大評価されていると、パターソンは指摘する。彼の試算によれば、米企業が中国市場で得ている利益は全体の約2%にすぎず、その大半は製造・販売とも中国で行っている事業で生まれている。仮に中国市場を失っても、その損失は「誤差の範囲内」に収まると、パターソンはみる。

とはいえ、例えば建設機械大手のキャタピラーは中国で30の工場を操業し、年間売り上げの10%を中国で稼いでいる。こうした企業は米中関係が史上最悪レベルに冷え込んでも、中国から撤退しないだろう。同じことは、中国全土で4300店以上を展開するスターバックスや、中国で年間100億ドル超を売り上げるウォルマートにも言える。これらの企業は中国が盗むような重要技術を持っていないから、中国で営業を続けても特に問題はない。

問題は電気自動車(EV)大手のテスラのような企業だ。同社の先進的な技術は何としても守らなければならないが、同社は上海工場でEVを製造しており、産業スパイの格好の標的になる。

そこでデカップリングよりも賢明な施策として、米シンクタンク・ハドソン研究所の上級研究員ジョン・リーは、社会的距離ならぬ「経済的距離」を置く戦略を提案する。「重要な技術分野で中国が優位に立つことを防ぐ」ためにカギを握るのは先進国の市場への中国の参入を制限することだと、リーは言う。「アメリカ、EU、東アジアへの参入が制限され、こうした地域からのインプットがなくなれば、(中国の計画達成は)はるかに難しくなる」

それには同盟国との協調が必要になるが、トランプ政権は同盟国と強力なタッグを組んでこなかった。その点はバイデンが大統領になれば変わるかもしれない。

同盟国との共同戦線がカギに

パンデミックが始まる前から、EUや日本などの対中感情は悪化していた。カナダもそうだ。米政府、EUと共同戦線を張れば、中国との通商交渉により強気で臨めたはずだと、カナダの元高官は言う。

それを妨げたのは?

「アメリカは『安全保障上の脅威』を理由にカナダの鉄鋼輸出を制限した。同じNATOの加盟国に対して、その扱いはないだろう!」

バイデンの顧問らも、中国に対抗する共同戦線を築くために同盟国とより緊密に調整を行いたいと考えている。バイデン政権が発足したら、通商政策で真っ先に取り組むのは、オバマ前政権が推進した環太平洋諸国の貿易協定TPPの練り直しだろう。新たなTPP交渉は、より露骨に中国を排除したアメリカと同盟国との自由貿易交渉になりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン制裁緩和巡り協調姿勢 米軍は再戦

ワールド

パキスタン首相「停戦違反は和平損なう」、自制呼びか

ワールド

ヒズボラが攻撃停止か、イスラエルはレバノンで大規模

ワールド

停戦協議のイラン側キーマンにガリバフ国会議長、指導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 5
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 6
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 7
    アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海…
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中