最新記事

アメリカ危機

米大統領の責務に背いたトランプを今すぐ「排除」せよ

Remove Trump Now

2020年6月4日(木)15時50分
ベン・マティスリリー

デモ隊を警官隊に排除させた後のラファイエット広場を歩くトランプ(6月1日、ホワイトハウス前) Tom Brenner−REUTERS

<自らの政治的利益のためにデモ隊の権利を蹂躙したトランプをこれ以上放置できない。多くの人命が失われてからでは手遅れだ>

6月1日、ホワイトハウス前の通りにいたデモ隊と野次馬に向けて、連邦警察の騎馬隊などが催涙ガスやゴム弾を放った。この通りを渡ったところにある聖公会教会を、ドナルド・トランプ米大統領が訪問する予定だったからだ。トランプはその後、前夜の抗議行動で放火の被害を受けたこの教会を訪問し、教会の前で聖書を手に写真撮影を行った。

白人警官による黒人男性の拘束死事件を受けて、全米各地で激しい抗議デモが展開され緊張が高まっている時期だけに、ホワイトハウス周辺には大勢の報道陣がいた。当時、デモ隊は平和的に抗議活動を行っていたと彼らは断言している。しかも警察が手荒な制圧を始めたのは、5月31日の夜の破壊行動を受けて首都に導入された夜間外出禁止令(午後7時以降)が発効する20分以上前のことだった。

ニューヨーク・タイムズ紙とCNNはいずれも、(言論の自由を定めた合衆国憲法修正第1条で保障された権利を行使していた)米市民へのこの「攻撃」は、トランプの画策だと主張。抗議デモが激化した先週末に、一度も公の場に姿を現すことなくホワイトハウスの地下壕に避難していたと、批判を浴びたことがその一因だと指摘した。

教会側は「小道具に使われた」と激怒

米聖公会教会ワシントン教区の主教はワシントン・ポスト紙に対し、トランプの教会訪問について事前に一切連絡を受けていなかったと述べ、教会が政治の「小道具」として使われたことに「激しい憤りを覚える」と語った。当時教会にいた牧師は、宗教問題を専門に扱う報道機関レリジョン・ニュース・サービスの記者に対して、トランプが来る前に警察官たちが排除した人々の中には、教会の外にいた複数の聖職者も含まれていたと語った。

自らの利益のために国民を力で排除する──これほど「アメリカ国民と合衆国憲法を守る」という大統領の責務に反する行為はない。こんな人間に我々の政府を率いる資格はない。

全ての民主党議員(そして共和党議員ながらトランプに批判的なミット・ロムニー)は、トランプを直ちに「大統領不適格者」だと強く訴えるべきだ。それが彼らの成すべき責務だ。

<参考記事>トランプが国民に銃を向ければアメリカは終わる
<参考記事>【世論調査】アメリカ人の過半数が米軍による暴動鎮圧を支持

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中