最新記事

全米騒乱

全米暴動、トランプは米軍を投入するのか

Trump Has Military Poised to Intervene, Whether Governors Want It Or Not

2020年6月2日(火)18時05分
ウィリアム・アーキン

国内の治安維持に連邦軍が投入されればきわめて異例の措置となる REUTERS/Jonathan Ernst(6月1日、ホワイトハウス周辺) Jonathan Ernst-REUTERS

<6月1日、デモが始まって6日目にやっと国民の前に姿を表したトランプは、「必要なら米軍投入」すると言った>

アメリカでは、白人警察官の暴行による黒人男性死亡事件への抗議デモが全土に拡大し、40以上の州や都市で夜間外出禁止令が敷かれ、15の州とコロンビア特別区で州兵が動員された。動員数は、市民の暴動鎮圧目的の作戦ではこの30年あまりで最も多い7000人超で、6月1日の夜までにはこの倍に増える見通しだ。

連邦政府はこれに加えて、警察官や(FBIと国土安全保障省の)諜報当局者にも、各州や自治体を支援するよう指示している。

全米に広がる抗議活動、警官とデモ隊の衝突もエスカレート The Telegraph-YouTube


鎮圧作戦を担当する米北方軍(NORTHCOM)のある高官(匿名)は本誌の取材に対し、「新型コロナウイルスの感染拡大危機への対応がようやく落ち着いてきたところで、突然慌ただしくなった」と語った。

「3カ月の激務で州兵たちは疲弊している。彼らのストレスに対処しなければならないだけでなく、我々の任務に強引に割り込んでくる州知事や市長、連邦機関にも対応しなければならないのは酷だ」

地元の警察を支援する目的で、一度に10を超える州に州兵を動員するなど初めてのことだと彼は指摘する。連邦軍も、ホワイトハウスの要請があれば出動する準備はできているという。「大統領がどんな命令を下すか次第だ。それによって状況は大きく変わる」と彼は言う。

<参考記事>ミネアポリスの抗議デモが暴動に......略奪から店舗を守ろうと武装市民が警護

既に憲兵2400人に準備命令

NORTHCOMには、市民の暴動鎮圧を目的とした「作戦計画3502」と呼ばれる緊急時対応計画がある。何百ページにも及ぶ作戦計画には、民間人による騒乱が発生した際に、軍が当局を支援する上での職務内容が詳しく説明されている。それによれば、民間人による騒乱(反乱、暴力行為、違法な妨害や集団での暴力行為、法と秩序を守る上で有害な行為など)について、大統領が「州当局や地方当局の対応では治安回復ができない」と判断した場合には、米軍の武力を使うことも許可されている。

丸腰のデモ隊に暴力を振るう警官も


前述のNORTHCOMの高官は、国防総省から米国内の4つの基地(コロラド州フォートカーソン、カンザス州フォートライリー、ニューヨーク州フォートドラムとノースカロライナ州フォートブラグ)に配属されている約2400人の憲兵に準備命令が出たと語る。5月29日の午後以降は、いつでも4時間以内に出動できる準備をしておけ、という命令だ。

<参考記事>警官と市民の間に根深い不信が横たわるアメリカ社会の絶望

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中