最新記事

鉄道

世界最速の座から転落 「上海リニア」もはや無用の長物?

2020年6月3日(水)16時35分
さかい もとみ(在英ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

外国人観光客には依然人気の高い上海リニアだが(筆者撮影)

世界で唯一の「高速リニアモーターカー」として商業運転を行っている上海トランスラピッド。試験走行では時速500km超を達成し、乗客を乗せた通常の営業運転でも最高時速430kmと、切符さえ買えば「誰でも世界最高速が楽しめる鉄道」として親しまれてきた。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりで利用客が激減。運行は継続しているものの、今春から全列車の最高速度を時速300kmに引き下げてしまった。運行会社は理由を公表していないが、乗客が減少する中での運行コスト削減のほか、施設の老朽化などを指摘する声もある。

最高時速300kmは、中国の高速鉄道のほか、日本の新幹線やフランスのTGVの営業最高速度よりも低い。世界最高速から一転して「中途半端な速度」で走ることになってしまった上海リニア。一方で、中国では新たなリニア路線の建設計画も浮上している。最新動向を分析してみたい。

時速430kmに歓声

一般的に「上海リニア」などと呼ばれる上海トランスラピッドは、ドイツの技術を導入し、1999年に開港した上海浦東国際空港と上海の市街地を結ぶ乗り物として2001年3月に建設を開始。わずか2年弱で30kmの高架線を完成させ、2002年の大晦日には中国・ドイツ両首脳出席のもと、盛大な開通式が行われた。

「陸上を飛行する乗り物」として鳴り物入りで登場したにもかかわらず、実際に乗客を乗せての試験運行は開通式から10カ月後の2003年10月にようやく実現した。その後、空港駅で降りられない市民向け体験試乗会が2003年暮れから半年あまり実施された。

期間中は空港駅で降りられないにもかかわらず、市民が大挙して乗車体験に殺到。当時はダフ屋まで登場する大騒ぎだった。筆者も体験試乗会の際に乗車したが、時速430kmに到達するやいなや、車内に大歓声と拍手が巻き起こったことを覚えている。

reuters__20200602130722.jpg

「時速430km到達」の車内表示(筆者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中