香港を殺す習近平、アメリカと同盟国はレッドラインを定めよ
Xi Jinping’s Dangerous Game
また中国企業によるIPO(新規株式公開)の4分の3近くは香港市場で行われているから、香港が「欧米の投資家にとって、中国本土市場へのアクセスを獲得する上で好適なルート」である事情に変わりはない。こうした点を考慮すれば、中国政府が香港の「本土化」にブレーキをかける可能性も残されている。
だからこそ、ポンペオの発言は拙速だったと言える。国家安全法の新たな条文が作成され、正式に施行されるのは夏の終わりだろう。それまでの間、米中両国には交渉の時間がある。香港人権法の発動はアメリカにとって最後の、そして最大の切り札だ。
レッドラインを定めよ
切り札は有効に使わねばならない。中国側が結論を出すまで、アメリカ政府は手の内を明かしてはならない。まずはヨーロッパやアジアの同盟諸国と歩調を合わせ、共通のレッドライン(越えてはならない一線)を定めるべきだ。その上で、もしも中国がこのまま強硬路線を突き進むなら、世界の主要国は一致団結して、香港に対する経済面の優遇措置を取り下げると警告すればいい。
そうして世界中で中国に対する反発が強まれば、今までは中国の顔色を気にしていた企業や投資家も逃げていくだろう。それこそが中国の恐れる事態であり、そうなれば中国政府も強硬路線を見直す可能性がある。国家安全法の適用という大筋は変えないまでも、深刻な影響を与えそうな条項を削除するなどの妥協に応じる可能性がある。それでも中国政府がレッドラインを踏み越えたら? その時は国際社会が団結して、強硬な対応を取るほかない。
そうなれば「香港は終わりだ」と言ったのは、民主派の立法会議員・郭栄鏗(デニス・クォック)。その先に見えるのは誰にとっても最悪の展開だ。あえて「一国二制度」の約束を破り、経済面の深刻なリスクを冒してまで香港に本土と同じ強権支配の構造を持ち込むようなら、習の中国は今後、一段と敵対的な反米・反民主主義の道を突き進むことだろう。
あいにく習には争いを避けようという意欲がほとんど見られない。協力が必要なのは言うまでもないが、中国人民との良好な未来を築くためにも、今こそ習近平の暴走を止める必要がある。
<2020年6月9日号掲載>
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