ロンドンの地下金庫に眠る金塊 ベネズエラ「2人の大統領」の争奪戦は司法の場へ
ベネズエラ大統領はどちらか?
裁判所に提出した書類によれば、ザイワラ氏は4月、英中銀側の弁護士に書簡を送った。英中銀に対し、10億ドル相当の金の売却を手配し、売却代金を国連開発プログラム(UNDP)に送金するよう指示する内容で、UNDPはこれによって、ベネズエラの新型コロナ対策に必要な医薬品・食糧を購入するものとされている。
英中銀はこれを拒否、ザイワラ氏は5月に訴訟を起こした。「国家規模・グローバル規模の緊急事態」において、英中銀がベネズエラ中銀の資産を奪ったという主張である。
オルテガ総裁は5月、ロイターに対し、「私たちには何の歳入もない。キャッシュフローを生み出す手段がない」と語った。
マドゥロ政権によると、ベネズエラの新型コロナ感染者はこれまでに3300人、死者は28人。ここ数週間で感染者数は加速しており、重症患者の急増による医療崩壊の懸念が高まっている。
UNDPはベネズエラ中銀からの接触があったことを認めている。6月3日付けで野党側に送られた書簡をロイターが閲覧したところ、UNDPのラテンアメリカ地域担当者は、何らかの関与を行うとすればベネズエラと英国の中銀の間で「公式合意」した後だと述べている。
英中銀は、マドゥロ氏、グアイド氏のいずれの中央銀行理事会からの指示に従うべきか裁判所に判断を求めている。
ベネズエラ中銀は裁判所に提出した陳述書のなかで、ベネズエラを実行支配しているのはどちらか、英国政府が承認した大使はどちらの側かを判断すべきだと主張している。英外務省の外交官リストにベネズエラ大使として記載されているのは、マドゥロ氏が任命した人物であり、グアイド氏側が指名したバネッサ・ノイマン氏ではない。ノイマン氏はこれについて、グアイド氏が出入国管理局を管理下に置いていないためだと述べている。
一方、グアイド氏陣営は、英政府が誰をベネズエラ暫定大統領として承認しているかに基づき裁判所は判断すべきだと主張している。英外務省は3月、裁判所宛ての書簡で、政府の立場は今も変わっていないことを確認している。
さらにグアイド氏率いる野党側は、マドゥロ政権によって関係者が恫喝されている主張している。ロドリゲス副大統領は5月、グアイド氏とその主任弁護士エルナンデス氏が「金を盗もうとしている」と非難した。
6月1日、エルナンデス氏は首都カラカスの自宅が諜報員によって襲撃されたと訴えた。ただ、同氏は現在米国に住んでいる。同氏はこの襲撃について「ベネズエラの海外資産を守ろうとした」ことに対する報復だと語った。
Angus Berwick Mayela Armas (翻訳:エァクレーレン)
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