ロンドンの地下金庫に眠る金塊 ベネズエラ「2人の大統領」の争奪戦は司法の場へ
英中銀の地下金庫に預けている金塊の管理権を巡り、ベネズエラのマドュロ大統領とグアイド暫定大統領(写真)が司法の場で争おうとしている。3月9日、首都カラカスで撮影(2020年 ロイター/Manaure Quintero)
英国の中央銀行であるイングランド銀行の地下金庫には、各国が預ける膨大な金塊が眠る。その一部、19億米ドル相当(約2000億円)の延べ棒を巡り、ベネズエラの2つの陣営が争っている。
マドゥロ大統領は、同政権下にある中央銀行の資産だと主張する。一方、米国などが大統領に認定する野党指導者グアイド氏は、この資産を管理すべきは自分であると言う。英政府がベネズエラの正統な指導者として認めているのは、グアイド氏だ。
どちらの主張に正当性があるか、英国の裁判所がこのほど審理を開始する。ベネズエラ中央銀行が、この資産へのアクセスを認めるよう英中銀を提訴したことを受けてのものだ。裁判官が5月28日に示した決定によると、何かしらの結論が出るのは8月あるいは9月になりそうだ。
マドゥロ側は金を売却してコロナ対策費と言うが......
減少を続けるマドゥロ左派政権の海外資産のなかで、この金はかなりの部分を占める。ベネズエラ中銀の弁護士によれば、金の大半は売却して新型コロナウイルス対応の資金に充てられる予定だという。6年間にわたる経済危機で揺らぐベネズエラの医療システムは、新型コロナで崩壊の危機に瀕している。
しかし、野党側は中銀の主張を否定する。マドゥロ政権はこの資産を友好国に売却するつもりなのだと、グアイド氏陣営は指摘する(政権側の弁護士はこれを否定)。過去2年間、マドゥロ政権が必要な外貨を調達するため、ベネズエラ国内の金約30トンを国外に売却していることが、関係者と中銀のデータから明らかになっている。
2018年5月の大統領選を違憲と主張し、19年1月にマドゥロ政権の正統性を否定して暫定大統領就任を宣言したグアイド氏側は、今回有利な判決が出れば他国にも影響を与え、諸外国の銀行口座に凍結されている50億ドルを含め、より多くのベネズエラ資産を掌握できるようになるものと期待している。
グアイド氏の主任弁護士(海外担当)を務めるホセ・イグナシオ・エルナンデス氏は、「裁判所からの承認が得られれば、非常に重要な前例となることは疑いの余地がない」と話す。
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