最新記事

金正恩

北朝鮮の民間経済を圧迫する独裁者の国債

Bonds and Coercion

2020年5月27日(水)18時30分
ベンジャミン・カッツェフ・シルバースティーン(米シンクタンク「外交政策研究所」研究員、「ノースコリアンエコノミーウォッチ」共同編集人)

ただし、相手が北朝鮮政府となると、契約の義務を本当に履行するかどうか、投資家は信頼できない。そのような債券の購入を強制することは、国が個人や機関から資金を接収するも同然だ。

北朝鮮の富裕層が経済的な利益にならないと考えて国債を敬遠する場合に、国が強制的に購入させる危険がある。国債の購入や国債による支払いを拒否する人々が(拒否するという選択肢があればの話だが)、北朝鮮で事業を続けていく上で障害にぶつかるかもしれないことは、市場の主要なプレーヤーから見れば明らかだ。

とはいえ、北朝鮮のような国で、完全に非政治的な経済活動というものはほとんど存在しない。平壌近郊の鉱山事業者が国債の購入を拒否して処刑されたという話も、驚くには値しない。処刑の理由には国家や党を批判したことも含まれていたが、国債の購入を拒否したこと自体が政治的行為だ。

今回のような措置が、どのくらいの規模で実施されているのかは分からない。長期的に機能するとは思えず、いつの間にか巻き戻されているかもしれない。そして、その過程で、さらに大きなダメージが生じかねないのだ。

(*この記事は、北朝鮮情報に関する米分析サイト「38ノース」が運営するブログ「ノースコリアンエコノミーウォッチ」からの転載)

<本誌2020年6月2日号掲載>

【参考記事】今だから振り返る、金正恩の残虐な犯罪の数々
【参考記事】金正恩は「いいやつ」「小柄で太めなのにバスケが上手い」

20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米3月モノの貿易赤字、9.6%増の1620億ドル 

ビジネス

アマゾン、関税費用表示との報道を否定 米政権は「敵

ビジネス

米GM、関税の不透明感で通期業績予想を撤回 第1四

ビジネス

米3月求人件数、28.8万件減 解雇も減少し労働市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中