新型コロナで閑散とする街のクリニック 経営悪化と医療の質に懸念
コスト意識の診療で質低下も
コロナ患者を受けている診療所や病院では、人材も病床もそこに集中する必要があり、他の患者の受け入れを制限してきた。その分、稼働率が低下し経営の悪化が目立っている。これを受けて政府も前向きに取り組む姿勢を示し、コロナ診療で収入が減少している医療機関への支援措置が、検討の遡上に上がっている。
一方、コロナ患者を受け入れていない小規模な診療所の患者減少による経営悪化については、日本医師会や日本病院協会などが5月1日、厚生労働省に支援要請を提出。本来は地域医療構想や在宅介護に充てる予定だった基金を診療所支援に使えるよう柔軟な対応を求めた。
全国保険医団体連合会でも、コロナウイルスに伴って患者の減少した診療所に国が減収分を補填するよう求めている。
日本医師会の中川俊男副会長はロイターの取材に対し、「病院・診療所の経営問題は、コロナウイルス患者を受け入れている医療機関の問題だけではない。それ以外の診療所なども含め、日本の医療提供全体の問題になってくる」と警告する。「今後、診療所が経営を維持するためには、看護師などの人件費を削減したり、機器の購入が困難になったりしかねない。経営を気にしながらの診療は医療の質を落としかねない」と懸念を示す。
コロナ禍による疾患増加は必至
緊急事態宣言に伴う国民の受診回避は、将来の疾患の急増につながる可能性が高い、との指摘も浮上している。
全国保険医団体連合会の理事も務める前出の山崎院長は、コロナ患者受け入れ病院が不急の入院や手術の受け付けを取りやめたほか、全国で健診や受診を控える動きが出ていることで、疾病の見逃しが生じていたはずだと指摘する。
特に乳幼児の場合はワクチン接種や定期健診が1カ月遅れただけで重大な疾患見逃しリスクが懸念されるという。訪問診療や老人ホームへの回診、デイサービスの減少も、ケアが必要な高齢者の歩行機能低下や体調悪化の急増につながる可能性がある。
診療所や病院の機能維持や経営支援は、コロナ以外の疾患や健康悪化が懸念される局面でこそ、重要な課題ともいえる。コロナ禍での医療崩壊は、我々の身近な医療環境をめぐる様々な面に及ぶ可能性があることを、念頭に置く必要もある。
中川泉(編集:石田仁志)
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