米独で集団感染が続く食肉加工工場 肉食を見直すべきとの声も
しかしながら先週、ディスカウントスーパー大手のAldiは、原材料の豚肉の価格低下を理由に、食肉業界にサラミやソーセージなどの加工品の値下げを要求した(シュピーゲル)。コロナ危機のなか供給を確保しようと業界が努力し、また政府が労働環境を改善しようとするタイミングでのこの要求に、「完全に思慮を欠いている」と、不快感や批判の声が向けられている。
肉食をやめることが地球温暖化のブレーキに
アメリカでも、アイオワ州の工場で2800人の従業員の半数近くが感染するなど、食肉加工工場でのクラスター発生は深刻だ。閉鎖した工場では家畜が余剰となり、安楽死を余儀なくされている。また、そのほとんどが移民である労働者たちは失業を恐れ、体調が悪くても出勤を続けがちだ。「安い肉」を手に入れるために労働者たちの置かれた環境に目を背けるという構図はここでも同じだ。
ドイツ同様、肉料理はアメリカに欠かせないだろう。少しでも安い肉への需要も大きい。が、アメリカでは価格よりも、肉食という習慣そのものに対し見直しの声が上がっているようだ。
気候変動に対する非営利組織ドローダウンによると、植物ベースの食事をすることは「地球温暖化を元に戻すために誰もができる最も重要な貢献」だという。
とくに効果的なのは、牛肉食を減らすことだ。牛は食品産業のなかで最も炭素を多く消費する部分で、農業排出の62%は牛の飼育が原因だ。もし牛が「国」だったなら、それは世界で3番目に大きな温室効果ガス排出国に相当するという(ワシントン・ポスト)。
反芻動物である牛のゲップには多量のメタンガスが含まれ、牛肉はタンパク質1gあたり鶏肉や豚肉の約2倍、豆の約20倍の土地を必要とする。また、2018年の調査によると、約1240万エーカーの森林(イエローストーン国立公園5つ以上に相当)が毎年、農産業のために伐採されている。地球上の氷のない土地の30%が家畜の牧草地として使用されている。
ヨーロッパ同様、アメリカでも若者たちのあいだでベジタリアンやヴィーガンが増えているというが、多くの人にとって長く慣れ親しんだ肉食を急にやめるのはむずかしいだろう。だが、誰もが牛肉を食べる回数を少し減らすだけでも、多少の効果はあるかもしれない。
さらに、Covid-19を含めいくつかのパンデミックがウェットマーケット(おもにアジアの生鮮市場)やバードマーケットから発生していること、アメリカ疾病予防管理センター(C.D.C. )が新しく発生した4つの感染症のうち3つが人畜共通感染症であると指摘していることなどから、肉に対する恐怖感も広まっている。
皮肉なことに、ロックダウンにより大気汚染や水質が改善された。今度は食習慣の見直しをするときかもしれない。