最新記事

韓国事情

韓国、元慰安婦を支援する市民団体と尹美香前理事長の寄付金疑惑が問題に

2020年5月22日(金)15時30分
佐々木和義

2015年12月の合意時点で生存していた元慰安婦47人のうち支援金を受け取ったのは34人で、元慰安婦の共同生活施設「ナヌムの家」に入居する11人は支援金を申請しなかった。「ナヌムの家」は仏教宗派の曹渓宗が運営する施設だが、19年に寄せられた義援金25億ウォンのうち、元慰安婦のための支出は6400万ウォンに過ぎなかったと職員が告発している。残る2人の元慰安婦は受領前に財団が解散したため、支援金を受け取っていない。

挺対協は2018年7月、正義記憶連帯(2016年設立)と統合した後も別法人として存続している。挺対協は外交部を主務官庁とし、統合後の2018年8月以降も政府や自治体から補助金を受け取り、寄付金を募っている。正義連の主務官庁は国家人権委員会だが、2020年度、挺対協は1億700万ウォン、正義連は5億1500万ウォンの政府補助金を受給しており、二重取りという声があがっている。

挺対協は2018年3月、元慰安婦のアン・チョムスンさんが亡くなった際に現金4億7594万ウォンを支出したと国税庁に申告したが、公示された月別収支の合計は約4億690万ウォンで、アンさんに支給したとする金額が1年間の支出総額を上回っていた。

正義連も2018年度、5億6470万ウォンの寄付金を支出したと国税庁に申告したが、公示された事業支出の合計は3億2453万ウォンで、2億4017万ウォンの差が生じている。2019年にも8億6226万ウォンを支出したと国税庁に申告したが、公示の内訳合計は8億558万ウォンだった。

慰安婦でカネを稼いだと批判

韓国挺身隊問題対策釜山協議会の金文淑(キム・ムンスク)会長は、尹美香氏を慰安婦でカネを稼いだと批判する。尹美香氏が代表になって以降、元慰安婦を前面に出して金儲けをする団体になったという。正義連が18年に慰安婦に支出した額は募金総額の1.9%にあたる2320万ウォンに過ぎず、19年も3%のみだった。

公益団体は不正を防ぐため、法人口座を使用するが、正義連はSNSで募った寄付金を尹美香代表の個人口座で受け取っていた。寄付金集めに利用した個人口座は3つあり、選挙に出馬する直前まで使っていた。

国会選挙で尹美香氏を推した与党・共に民主党は、事実関係の確認が先だとして立場を留保している。告発した李容洙さんは、2019年3月1日に政府が主催した三・一運動100周年行事で金正淑大統領夫人の隣に着座するなど文政権の慰安婦政策で果たす役割は小さくない。青瓦台(大統領府)は沈黙を続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中