韓国でまたも「慰安婦問題」 支援団体の不正会計疑惑を91歳が告発
毎週水曜日の正午にソウルの日本大使館前で行われる水曜集会(2019年8月) KIM HONG-JI-REUTERS
<被害者女性を支援してきた「正義連」前理事長で、4月の総選挙で当選も果たした著名活動家に疑惑。元慰安婦の告発者は日本大使館前の抗議集会も批判した>
韓国で「慰安婦問題」がまたも話題になっている。ただし今回、批判の矢面に立たされているのは元慰安婦の支援団体、特に長年支援活動を先頭に立って引っ張って来た韓国の著名な活動家だ。
「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長は、被害者女性支援のための寄付金を不正に流用したとして告発されている。
正義連の前身は1990年に設立された「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)。元慰安婦の権利を擁護し、日本政府の全面的な謝罪と賠償を求める活動を展開してきた。
また、被害女性の権利回復、女性に対する戦争犯罪の告発、アジア全域の平和推進にも重要な役割を果たしてきた。尹は正義連の主要人物の1人で、与党陣営から4月の総選挙に立候補して当選した。
尹への疑惑が浮上したのは、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス、91)が寄付金の使途に疑問を呈したことがきっかけだった。
保守系紙・朝鮮日報によると、正義連は2018年に元慰安婦の権利を訴えるイベントを開催した後、全国にパブチェーン店を展開するディオブリューイング社に約3300万ウォンを支払ったと国税当局に報告した。
だが同社は朝鮮日報の取材に対し、イベントの費用は約970万ウォンにすぎず、そのうち約540万ウォンは寄付金として主催者に返したと答えた。これが事実なら、正義連は税務当局に支出を誇張して報告していたことになる。
正義連がこのイベントに使ったと主張した金額(約3300万ウォン)は、同じ年に直接慰安婦支援に使った金額(約2300万ウォン)よりも多い。
正義連は朝鮮日報の報道に対し、その年に実施した全てのイベントの全ての費用をディオブリューイングへの支出として一括処理したと説明したが、この弁明は正義連の会計処理のやり方に対する疑念を深めただけだった。
騒ぎが大きくなるなかで、注目を一身に集めているのが正義連を長年率いてきた尹だ。野党議員からは国会の議席を返上するよう求める声も上がっている。
過去の会計内容を全て明らかにするよう求める声が高まるなか、正義連は記者会見を開き、尹は会計処理に誤りがあったことを認め、少ない人手で多くの事務処理をこなす市民団体にありがちなことだと説明した。
一方、毎週開催している抗議デモ「水曜集会」について正義連は、今回の疑惑や世論の批判とは関係なく継続する意向を示した。正義連は挺対協時代の92年から、毎週水曜日の正午にソウルの日本大使館前で生存している元慰安婦や支持者らと抗議集会を行い、戦争時の女性に対する暴力の根絶、正義の実現と人権を訴えている。