リモートワーク「先進国」アメリカからの最新報告──このまま普及か、オフィスに戻るか
WORK FROM HOME NATION
「新型コロナレベルの世界的な大事件は、少しずつ拡大していたトレンドやシフトを一気に加速させることが多い」と、コンサルティング会社エマージェント・リサーチのスティーブ・キングは語る。
かねてから、多くのオフィスワーカーは在宅勤務の柔軟性を求めてきたし、企業はリモートワークを推進しつつ、オフィスは個室を廃止して、オープンなレイアウトを採用してきた。ビジネス用チャットツールのスラックや、テレビ会議アプリのズーム(Zoom)といったサービスも、既に使われつつあった。
とはいえ、急に現実になったリモトーワークには、まだ不便な部分がある。多くの人は、自宅に仕事専用のスペースがないし、孤立している感覚が大嫌いだ。プライベートと仕事の時間を区別するのも難しい。企業の側でも、技術的なインフラが整っていない場合がある。
社員はサボるに決まってる?
パメラ・ゴンザレス(24)が勤めるフロリダ州オーランドの人材紹介会社は、グーグル・ボイスなど、リモートワークに必要な技術環境を整えるとともに、設備に関する問題を扱う部門を強化した。それで、実際に在宅勤務をしてみてどうなのか。
「いい面と悪い面がある」とゴンザレスは言う。「自分でも驚いたことに、自宅で仕事をしたほうがずっと生産的だ。誰かに監視されている気がしないし、2時間ほどものすごく集中的に働いて、休憩して、仕事に戻るといった働き方ができる。オフィスでは気が散ることが多い」
その一方で、「プライベートの境界線がなくなる」と、ゴンザレスは語る。「在宅勤務初日の夜、10時にコンピューターの前に戻って仕事を始めてしまった。もちろんボーイフレンドはいい顔をしなかった」
管理職にとっても、リモートワークは意識改革を強いているとゴンザレスは語る。新型コロナ問題が起きる前に、リモートワークを推進していない企業がその理由として挙げたのは、「社員がサボると思うから」が多かった。チームの生産性低下を懸念する管理職も少なくない。
ところがG&Sの調査では、最近在宅勤務を始めた労働者のうち、オフィスで働いているときよりパソコンに向かっている時間が長くなったと答えた人は4分の1を超えている。また、ハーバード大学の昨年の調査では、好きな場所で仕事をする自由を与えられた人々のほうが生産性が高いという結果が出ている。
自分でリモートワークをやってみて、得心する管理職も多いと、リスターは言う。「家に居ながらにして自分がどのくらいよく働いているか、どれほどの時間を仕事に投じているか分かれば、部下への信頼という問題の解決につながる」