リモートワーク「先進国」アメリカからの最新報告──このまま普及か、オフィスに戻るか
WORK FROM HOME NATION
在宅勤務ではきちんと連絡を取り合い、その内容を記録して上司や同僚に状況が分かるようにする必要があるが、それが会議への過剰な依存につながる場合もある(会議が多いと生産性が上がっているような幻想を抱いてしまいがちだ)。ビデオ会議システムのアウル・ラブス社の昨年の調査では、週に11回以上の会議に出席している人はオフィスワーカーの3%にすぎないが、リモートワーカーでは14%に上るという。
ともあれ、必要なツールがなければ生産性を上げるのは難しい。全ての在宅ワーカーが恵まれた条件の下で働いているわけではなく、必要なテクノロジーを導入していない企業では在宅勤務への移行に二の足を踏むところもあるかもしれない。G&Sによれば、在宅勤務を始めたアメリカ人の40%が、電話やノートパソコンなどの技術面での準備が大きな課題だったと答えている。
ニューヨークでインターネットを使った不動産仲介サービスを展開するスクエアフット社では、3月13日に在宅勤務を義務化する前から推奨していた。「それでも開発者の中には出社する人もいた」と、同社の幹部エンジニアであるダグ・タブチは言う。家ではなかなか思いどおりの仕事環境を構築できないからだ。
一つ一つは小さなことでも積み重なれば大きくなる。例えばオフィスでは2台のモニターを使っているのに家にはないし、打ち合わせの時はワイヤレスイヤホンを使う。そのせいで「作業量にも影響が出ている」とタブチは言う(ちなみに彼は、妻と生後2カ月の赤ん坊と小さなアパートで暮らしている)。
ボストンのソフトウエア会社ブルホーンでは、以前から1200人の従業員のうち約20%がリモートワーカーだった。それでもアート・パパスCEOは、生産性への悪影響を懸念している。直接会ったほうが簡単に終わる業務が少なくないからだ。「最大の問題は、直接会う会議よりもビデオ会議のほうが消耗するということだ。いつもとは違うレベルの集中力が求められ、注意を向けるのも難しい」と彼は言う。
だが従業員たちは適応していくだろうとも彼は考えている。
「いかなる技術もそうだが、リモートワークに慣れるのにも時間がかかるだろう」
それに、大きな利点もある。「2時間も交通渋滞につかまったりすることもないし」
利点は多いが孤独はつらい
そうした利点が評価されれば、リモートワークは企業にとって人材集めの切り札にもなり得る。コンサルティング会社ワークプレース・インテリジェンスのダン・ショーベルは言う。「勤務体系がフレキシブルかどうかは職探しの重要な基準になってきている。今回、みんながその利点を味わったわけで、(そうした職への)需要はさらに高まるはずだ」