リモートワーク「先進国」アメリカからの最新報告──このまま普及か、オフィスに戻るか
WORK FROM HOME NATION
新型コロナウイルスの感染拡大で外に出られなくなり、人々の生活は大きく変わった MALCOLM P CHAPMAN-MOMENT/GETTY IMAGES
<新型コロナの影響で「夢の在宅勤務」がいきなり実現、新しい働き方として定着する可能性は──パンデミックが強いる巨大な社会実験の実態とその行方。本誌「リモートワークの理想と現実」特集より>
会社に行かなくなって、もう何日になるだろう──。上下ともスエット姿でノートパソコンを眺めながら、ぼんやりとそんなことを思う。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、多くの企業が従業員に在宅勤務を命じるようになってからしばらくがたつ。
最初の数日は最高だった。毎朝、何を着ていくか思い悩まなくていいし、髪の毛がボサボサのままでも問題なし。鏡で自分の姿をチェックする必要さえない。だって会社に行かなくていいのだから!
でも、料理やスポーツと違って、在宅勤務は経験を積むほどうまくなるとは限らない。それでも、多くのビジネスパーソンがいま経験していることは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後も、新しい働き方として定着する可能性が高い。
「リモートワークの転機になるかもしれない」と、コンサルティング会社グローバル・ワークプレース・アナリティクスのケイト・リスター社長は言う。「物理的なオフィスがなくなることはないだろう。だが、少なくとも週の一部は、自宅で仕事をする人が増えるだろう」
その変化は、既に統計に表れている。調査会社ガートナーが人事部門の管理職800人を対象に行った調査(3月17日発表)によると、調査対象の企業や団体の88%が従業員に在宅勤務を奨励または義務付けている。G&Sビジネスコミュニケーションズが3月21日に行った調査でも、26%が在宅勤務に切り替えた。
この移行を支えるサービスも花盛りだ。無料音声会議を提供するフリーカンファレンスコールは、アメリカでの利用が2000%増えたという(イタリアでは4322%、スペインでは902%増)。ネットワーク分析会社ケンティクの調べでも、北米とアジアではビデオ会議のデータ量が約200%増えた。
新型コロナのパンデミックは、社会にも経済にも、巨大な実験を強いていると言っていい。その中では、私たちの誰もが実験台だ。
米人材管理協会(SHRM)の調査によると、新型コロナ問題が起きる前から、69%の企業が、少なくとも一部の社員にリモートワークの選択肢を与えてきた。また、仕事の一部をリモートワークにすることを提案した企業は42%、業務を全面的にリモートワークに切り替えることを提案した企業は27%に上る。
この流れは、3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言して以来、加速している。先陣を切ったのは、マイクロソフトやアマゾンといったIT系企業だが、フォードやフィアット・クライスラー・オートモービルズなどの自動車大手も、世界中の従業員に在宅勤務を呼び掛けた。AT&Tなどの通信大手や、JPモルガンやゴールドマン・サックスといった金融大手も続いた。