ドイツで抗議デモ急増、陰謀論者と反ワクチン主義者が警察とジャーナリストを攻撃
CDUのパウル・ズィーミアク事務局長はアウグスブルガー・アルゲマイネ紙に「コロナ危機を反民主主義プロパガンダのプラットフォームとして過激派に利用させはしない」と語っている。また、ハイコ・マース外相は「ジャーナリストを攻撃するものは私たちの民主主義をも攻撃している」とツイートしている。
チューリンゲンでは、昨年の選挙で極右政党AfDの力を借り一時的に州知事となったFDP党首のトーマス・ケンメリッヒが週末、マスクをつけずにデモに参加。イメージダウンを恐れた党内から党首を退くよう声が上がっている。
反ワクチン主義は「世界の健康に対する脅威」WHO
土曜日にマスクも身体距離も無視してデモに参加した万単位の人々が今、ドイツ中に散らばっている。規制への抗議、またニュースを信じないトランプ支持者たちによるデモは先にアメリカ各地でも起きたが、参加者が新型コロナに感染・死亡するケースも出ている。
ワクチンの有効性を信じない、あるいは人体に有害であるとする反ワクチン主義(アンタイ・ヴァクサーズなどと呼ばれる)は昨年からアメリカで社会問題化している。2019年に行われた調査によると、アメリカ成人の45%がワクチンに対して懐疑的だという。一部の極端な反ワクチン主義者には自分や自分の子供に接種を許さず、結果、周囲に感染を引き起こしてしまうケースが続き、WHOは2019年、「ワクチン忌避」を「世界の健康に対する10の脅威」の1つに挙げている。
ドイツはイタリアなどのようにワクチン接種の義務付けはない。連邦健康教育センター(BZgA)によると、20%がワクチンに懐疑的だ。フランスがEU5か国を対象に行った調査によると、この割合は他国よりやや多く、3%は断固として子供に接種させないと答えている。効果や人体への害に対する不安に、政府からの強制を毛嫌いするドイツ人気質もあるだろうが、なかには「ワクチンが病気を蔓延させる」と信じる陰謀主義者もいるようだ。
ただし、おそらく新型コロナのせいだろう、ドイツ人はワクチンに対して以前より好意的であるとBZgAは指摘している。また、最新の感染保護法により保健省は州の合意のもと特定のワクチン接種を要求することができるようになっており、今年3月からは就学年齢の児童に「はしか」の予防接種が義務付けられている。
欧州医薬品庁(EMA)は14日、新型コロナのワクチン開発には楽観的に見ても1年かかると発表した。まだ開発が夢のまた夢の状態で陰謀と関連付けるのも、なんだか滑稽な話だ。同じく14日、来る新型コロナ第二波第三波に備え、来冬のインフルエンザ患者を減らし医療負担を軽減するため、現在は接種が限られている予防接種をより多くの人が利用できるよう保険会社がカバーすることが連邦議会で決定された。なお、一時期話題になった「免疫パスポート」案は保留となっているようだ。
再びロックダウンの可能性も
ドイツでは実効再生産率(Rt)1以下(感染数が縮小する目安)が続いたため、先週になって規制緩和が実行されたが、その直後一時的に1を超えてしまった(緩和は4月末から少しずつ始まっていたので、その影響だろう)。ロベルト・コッホ研究所の発表によると、14日現在のRtは0.75、また同日更新された週平均は 0.88だった。
メルケル首相は緩和と同時に、新感染者が7日間で10万人あたり50人を超えた場合にふたたび各種制限を課す「緊急事態ブレーキ」について告知している。これにより、食肉工場で集団感染が発生した地域などが対応を余儀なくされた。
この2か月、ドイツ市民は厳しい制約に耐え、やっとここまで来た。今ここで「一度に多くを要求しすぎて」すべてを台無しにしてしまわないよう、メルケル首相はルールの遵守、また他者への尊重を呼びかけている。