コロナ危機を売名に利用するテロ組織の欺瞞
For the Taliban, the Pandemic Is a Ladder
思わぬ自然災害や非常事態が和平の糸口になる可能性はある。災害が紛争終結の道を開いた例は現にある。2004年のインド洋大津波の後には、インドネシア政府と同国アチェ州の独立派との間で和平交渉がまとまった。
武装組織に呼び掛けよ
しかし、それは例外だ。むしろ、パンデミックは社会の二極化や紛争悪化のリスクを高める可能性がある。全世界で人道目的の一時戦闘停止を強く求め続けることは極めて重要だが、それが武装組織の支配下で暮らす人々の助けになる可能性が低いのもまた悲しい現実だ。
国連のアントニオ・グテレス事務総長は、パンデミックと闘うために世界が団結して全力を尽くすよう促している。そのためには、武装組織に対してウイルス対策における彼らの責務を説くという、今よりもっと断固たる取り組みが必要だ。相手がテロリストであれ犯罪者であれ、それで彼らの存在が一時的に正当化されるとしても、世界はその努力をするべきだろう。
そうした対話は人道的な一時停戦につながる可能性があるだけでなく、医療従事者の安全確保や政府の医療関連機関との連携についての交渉にもなるかもしれない。適切な医療上のメッセージを武装組織に伝えるだけでもいい。
いずれにせよ、一定の領土を支配し、なんらかの正統性を認めてほしいなら、反政府勢力もパンデミックによる死者を減らす上で一定の役割を果たすべきだ。
アフガニスタンでは、停戦に重点を置いた政治的な圧力よりも、人道的な取り組みを優先させたほうが現実的な結果につながるかもしれない。援助国や援助機関は、武装組織にも果たすべき重要な役割があることを認め、ウイルスの拡散を阻止して医療従事者が円滑に働けるようにするために、具体的な行動を呼び掛けるべきだろう。それでも協力を拒めば、タリバンは犠牲者を出した「共犯」として公に批判されるべきだ。
国際社会がこうした行動を取らなければ、タリバンは今後も、自分たちの政治目的のためにパンデミックを利用し続けるだろう。自分たちの仲間が次々と死んでいけば、彼らも問題を深刻に受け止めるようになるかもしれない。しかし、そうなってからではもう手遅れなのだ。
<本誌2020年5月19日号掲載>
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