コロナ危機を売名に利用するテロ組織の欺瞞
For the Taliban, the Pandemic Is a Ladder
政府のウイルス対策が不十分だと、「住民への奉仕という点ではテロ組織のほうが頼りになる」という印象が助長されかねないと警告するアナリストもいる。
たいていの場合、こうした評価は眉唾ものだ。テロリストや犯罪組織にはパンデミックを宣伝に利用する力はあっても、公衆衛生上の危機に対応する能力は欠いている。感染対策のもたらす経済的・社会的な副作用への対応もできるはずがない。臨時政府の樹立を宣言し、国際社会の支援物資を横取りすることはできても、自力で医療サービスを提供する技術も経験もない(ほとんど唯一の例外はレバノンのヒズボラで、彼らは何千人もの医療スタッフを感染対策に動員している)。
豊かな先進諸国でさえ、今回のパンデミックには手を焼いている。世界で最も先進的な医療システムを持つ国でも新型コロナウイルスの感染拡大には追い付けない。暴力の支配する苛酷な環境に置かれた人々には打つ手がない。結局のところ、武装組織の支配下にいる民間人は最大の被害者だ。暴力は医療へのアクセスを制限し、サプライチェーンに負担をかける。善意の医療スタッフも、安全な場所に避難せざるを得ない。
そうなれば地域全体が医療サービスから切り離され、物資の供給路も断たれて医療システムが完全に崩壊する。アフガニスタンの首都カブールでは、既に人口の3分の1が新型ウイルスに感染しているとの報道もある。政府の推定でも、国内の死者は最終的に11万人に達するという。実際はその6倍になるという説もあるが、いずれにせよ確かなことは分からない。
停戦を拒否し攻撃を激化
国連は3月23日に全世界に向けて、感染予防のための一時休戦を呼び掛けた。これに対してコロンビアやフィリピン、リビアや南スーダンなどの武装組織が休戦に応じる姿勢を表明した。
しかし、実際に戦闘行為が止まった地域はわずかだ。たいていは一方的な休戦の意思表示にすぎず、相手方がそれに応じることはなかった。コロンビアのELNは休戦を表明したが、政府が応じないとして戦闘を再開した。リビアとイエメンでも、すぐに約束が破られた。フィリピン政府と新人民軍の休戦協定も4月で期限が切れた。
こうしたなか、タリバンは戦闘停止を拒み続け、むしろ攻撃を激化させている。政府側は、暴力がエスカレートすれば医療従事者が仕事できなくなると警告している。タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は「われわれの支配地域で感染拡大が起きれば、その地域での戦闘は停止する」と表明したが、もう感染は現実に起きている。タリバンが支配する西部ヘラート州の一部はアフガニスタンにおける感染拡大の中心地だ。