フン・センを批判の女性活動家襲われる 新型コロナに乗じ首相権限強化のカンボジア
独裁強化を続けるフン・セン
カンボジアは野党CNRTが2017年に実質的な解党に追い込まれ、現在はフン・セン首相の与党「カンボジア人民党(CPP)」による実質的な一党支配が続いている。
CNRTの指導者だったサム・レンシー氏は、事実上の亡命生活を送るフランス・パリから2019年11月にカンボジアに帰国しようとしたが、マレーシアなど周辺国まではたどり着いたもののカンボジアへ向かう航空機への搭乗を拒否され、最終的に帰国を阻まれた経緯がある。
カンボジアの野党関係者や人権団体によると、2019年半ば以来、政府批判を強める野党関係者やマスコミ関係者、人権、民主化運動の活動家などに対する暴力行為が増えているとされ、エアンさんで16人目となる被害者の大半は恒常的に治安当局関係者などによる監視と脅迫の対象となっているという。
自国民の安全より習近平との蜜月選ぶ
カンボジアは新型コロナウイルスの東南アジアへの拡散の際も「拡散の震源地」とされた中国・武漢に留学していた大学生や社会人に対し、フン・セン首相が「カンボジアに帰国せずに現地で中国人とともにコロナと戦え」と指示。直後に首相自ら北京を訪問して習近平国家主席と会談するなど親中ぶりを発揮している。
一方では感染拡大を恐れて受け入れ国がなくなり行き場を失った豪華客船をカンボジア南部のシアヌークビル港への寄港を認めてフン・セン首相自ら乗客を出迎えたり、プノンペンでの記者会見に参加した記者のマスク着用を禁じたりするなど独自のパフォーマンスでニュースを振りまいている。
カンボジアの新型コロナウイルス感染者は5月12日現在で感染者122人、死者は0人となっている。この数字は5月初旬以来全く変化していない。
このためカンボジアの医療水準や検査態勢などからこの感染者、死者の数値に対して疑問の声も国際社会で高まっていることも事実である。
そうしたなかでフン・セン首相は「非常事態を宣言する可能性など0.1%である」と述べ、その理由として国内の感染拡大をコントロールできているからだとしている。
こうしたことからカンボジアと国境を接するタイでは3月23日から全ての国境を閉鎖して陸路での出入りを禁止する措置を取っている。しかし最近では一部国境が再開されて物資の輸送が始まっているとの情報もあり、国境でのコロナウイルスの厳格な検査態勢が問われる事態となっている。