日本人は本当の「休み方」を知らない──変われないのはなぜか
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有休の取得率となると悲惨だ。総合旅行サイトのエクスペディア・ジャパンが毎年19カ国、18歳以上の有職者に行っている最新調査(2018年)によると、日本の有休取得率は50%。3年連続で最下位だ。しかも、取得日数も最短の10日間。昨年、「最低5日の有給休暇取得」が義務付けられる前の数字とはいえ、休んでいる日数は圧倒的に少ない。
同調査によると、日本人が有休を取らない理由の1位は「人手不足」。そして2位が「緊急時のために取っておく」。3位が「仕事する気がないと思われたくない」。この緊急時というのは、自分や家族が病気になったときという意味だ。これは世界の常識ではあり得ないと、早稲田大学商学部で労働問題について研究する小倉一哉教授は話す。
「フランスでは、病気になったら欠勤するのが当たり前。バカンス中に病気になったら、その日から休暇を病気欠勤に切り替え、元気になってからまた休暇に戻る」
一方で、よく指摘されるように日本の労働生産性は長年低迷を続けている。日本労働生産性本部がOECD(経済協力開発機構)のデータを基に計算したところでは、2018年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は46.8ドルで、アメリカ(74.7ドル)の6割強の水準でしかない。OECD加盟36カ国中21位、主要先進7カ国では、1970年以降ずっと最下位だ。
2019年の働き方改革関連法による労働基準法の改正は、約70年ぶりだった。「休み」に関するポイントは、①時間外労働上限の制定(原則月45時間かつ年360時間)と、②年次有給休暇取得義務化(年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、年5日は使用者が指定する時季に休暇を取得させることを義務付け)の2点だ。
だが、施行されても改正に実感が湧かない人も多い。昨年9月に日本マーケティングリサーチ機構が行った調査では、約86 %が「働き方改革」という言葉は聞いたことがあるものの、約半数がその内容を理解していなかった。しかも「脱法行為」が横行していると小倉は指摘する。
「日本の法律では、実は休日は週1日だけ。だから週休2日の場合、企業が土曜を就業規則上の休みにしていることが多い」と、小倉は言う。「そこで、今回の改革で最低5日の有給休暇取得が義務化されると、就業規則を変え、年5日の土曜を出勤日に変えた上で会社の指定休にした企業もある」
つまり、従業員は何も知らないまま、いつの間にか5日休んだことになっているというのだ。
休みが切実に必要な日本社会
日本では「休みたくない」労働者が意外と多いのも事実だ。「働きたい人が働いて何が問題なのか」「休んでもやることがない」「お金がないから働いているほうがいい」といった声は根強い。
これに真っ向から異を唱えるのは、中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授だ。「休んでもやることがない、というのは本当の意味で危機感がない証拠」と、佐藤は言う。「社会も仕事もどんどん変わっていく。変化に対応するには仕事以外の経験を広げ、学び、柔軟な人材にならないといけない。自分を多様化させるために必要なのが休暇だ」