緩むとこうなる?制限緩和を試みた韓国にコロナのしっぺ返し
South Korea Tries a Tentative Reopening—and Pays for It
繁華街に人が戻る時、感染は再び拡大する?(ソウル、4月22日) Heo Ran-REUTERS
<100人を超える集団感染。それでも、対策は全体として功を奏している、と専門家は自信を見せるが>
「アイスアメリカーノの人は手を挙げて?」──一人の男性が周りの同僚たちに尋ねると、10人が手を挙げた。男性はカウンターに行ってアメリカーノを注文し、その間、同僚たちは近くで楽しそうに立ち話をしていた――。韓国で外出規制が緩和されて、多くの人が職場に戻った5月6日。久しぶりに会った同僚と話が尽きないのも当然だろう。
積極的な対策で新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めることに成功したと世界から称賛されている韓国では、この日から外出や集会の禁止措置が正式に緩和された。ソウル市庁舎の近くで働いている前述の男性たちは、これで安心して12人で連れ立って近くのコーヒー店を訪れることができるようになったと上機嫌だった。グループの中の管理職風の男性は、若い同僚に「500ウォン(約50セント)の貸しだぞ」と冗談めかして言い、彼に近づいていって腹を殴る真似をした。
「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)」など過去の話のように思えた。国の新たな方針としては「生活防疫」が掲げられた。閉鎖されていた店舗や事業所は再開、学校も近いうちに再開する一方で、市民はマスクを着用したり互いに少し距離を空けたりするなど、必要な感染防止策を講じた上で日常生活を送ることになる。もちろん、体調が悪い人は自宅にとどまらなければならない。
繁華街から広まった感染に怒り
だがその後、状況は一変。韓国の「勝利」は一瞬で終わった。規制緩和を控えた週末、新型コロナウイルスに感染している29歳の男性が、バーやナイトクラブがひしめくソウルの繁華街・梨泰院地区を訪れたのだ。この男性を中心に発生した集団感染で、12日までに少なくとも102人の感染が確認され、1日あたりの感染者数も1カ月ぶりの高い水準を記録した。問題の29歳の男性は複数のナイトクラブを訪れており、当局は約1500人がウイルスにさらされた可能性があると推定している。
ソウル市は感染者数が増えるとすぐに、ナイトクラブやバーに事実上の営業停止命令を出した。また男性と同じ週末に梨泰院地区にいた全ての人に対して、症状の有無にかかわらず検査を受けるよう要請した。韓国疾病予防管理局によれば、11日には新たに感染が確認された35人のうち29人は感染経路不明の市中感染だった。感染者が再び急増していることに、韓国のネット上では多くの怒りの声が上がっている。中でも集団感染の発生源がゲイバーだと報じられたことで、人々の怒りの矛先はLGBTコミュニティーに向けられている。