新型コロナに立ち向かう「マイクロネーション」の独立精神を見よ
The Intangible Spirit of Micronations
エキセントリックな建国精神が「国家」の意味を問い直す(写真はモローシア共和国) REPUBLIC OF MOLOSSIA
<各地に点在する未承認の「ミニ独立国家」、コロナ危機にもアイデンティティーは揺らがない>
既に世界210カ国・地域に広まっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。国際社会から承認されていない「マイクロネーション」も、国家としてこの危機に立ち向かっている。
マイクロネーションとは、個人などが独立国家を名乗る小規模なコミュニティーだ。私有地を領土と主張したり、独自の通貨や切手を発行したりする国もあれば、書類やインターネット上だけで存在する国もある。
彼らの建国の理念は、時に私たちの想像を超える。しかし、風変わりな個人主義者や、財産権を主張する政治オタクだけでなく、賢明な国際感覚を持つ建国者もいる。
「国家」とはいえ、医療資源の統制や警察による社会的距離の監視とは無縁。だが、集団的なアイデンティティーという強固な基盤がある。米国内外の5つのマイクロネーションに、外交ルート(電子メール)を介して話を聞いた。
■ モローシア共和国
領土はカリフォルニア州とネバダ州の私有地約2万5500平方メートル。建国は1977年。1999年から国を率いるケビン・ボー大統領の下、現代国家の多くの機能を備える。
独自の通貨バロラ(チョコレートチップクッキーの生地の価格と連動)や郵便サービス、国立公園、火山研究所、ロケット計画、鉄道などを擁し、インターネットラジオやニューズレターで公共サービスを提供している。
ただし、医療などの社会資源は、モローシアを取り囲む大規模な国(アメリカ)に依存し、対価として対外援助(税金)を拠出している。
「国民の大半はロックダウン(都市封鎖)下にあり、国外の就労場所には2〜3人で移動する。まだ国民に感染者はいない。ロックダウンと社会的距離の基本対策が効果を上げている証拠だ」と、ボーは語る。「状況がこれ以上悪化しないでほしい。モローシアだけでなく、国境を接するアメリカでも、さらには世界全体でも」
■タロッサ王国
タロッサ王国はウィスコンシン州ミルウォーキー東部に領土を持つ。1979年に当時14歳のロバート・ベン・マディソンが自宅の寝室で主権国家の独立を宣言し、初代国王に就任した。
インターネットで成功したマイクロネーションの1つであり、「参加」する国民が世界中に約100人いる。二院制の議会、内閣、複数の政党があり、独自の言語を持つ。
ダフネ・ローレス首相によると、タロッサの政治と市民生活は、ほぼ完全にオンライン化されている。ローレスはメールの最後をタロッサ語の格言で結んだ。オンライン辞書によれば次のような意味らしい。「生き延びる唯一の希望は、ホワイトハウスのオレンジ・ゴブリン(小鬼)を追い払うことだ」