最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナに立ち向かう「マイクロネーション」の独立精神を見よ

The Intangible Spirit of Micronations

2020年5月8日(金)16時40分
アンドルー・ウェーレン

西アークティカ大公国

「大いなる不安定の時に、私から伝えたいことがあります」。トラビス・マクヘンリー大公はビデオ演説で自国の市民にそう語り掛けた。

マクヘンリーは2001年に、南極大陸西部のマリーバードランドと呼ばれる地域の160万平方キロを領土と主張して、西アークティカ大公国の建国を宣言した。この地域は世界の大多数の国が、地球上で領有権が確定していない最大エリアと見なしている。

南極大陸に国の旗を掲げるのは、危機に瀕している南極西部の生態系と氷床の状態に注目を集めたいからだ。

新型コロナウイルスについてマクヘンリーは、市民にそれぞれ地元の公衆衛生当局の勧告に従うように呼び掛けている。ちなみに「ドイツを拠点とするわが国の外務大臣は、ドイツ軍に招集されて医療活動を支援している」。

オブシディア移動自由国

全ての国境をカリフォルニア州オークランドと接しているオブシディア移動自由国の領土は、2つに割れた火山岩。大きめのパイナップルほどの重さで、持ち運びも簡単。パンデミック(感染症の世界的大流行)対策もあっという間だ。建国者のケイロ・ヤグジアンは、多くの州の外出制限に先駆けて領土を封印した。

オブシディアはアメリカに対し、コロナ危機の最前線で働く人々への医療、危険手当、有給休暇、病気休暇の提供を求めている。これには農業従事者や、食料品店や飲食店で働く人々を含む。

「私たちの仲間の多くは、仕事を失ったり、数週間前までは社会に必要不可欠だとも思われていなかったような低賃金の仕事で働いたりしてリスクにさらされています」と、ヤグジアンは言う。

オブシディアはLGBTQ(同性愛者などの性的少数者)とフェミニストが中心になって、理想の政府の新しい概念を追求しながら、資本主義に替わる社会を模索している。

「私たちの大使館は閉鎖中ですが、相互援助の精神と強さに変わりはありません」

ザキスタン共和国

コロナ危機は国家主義の失敗を浮き彫りにしたと、ザキスタン共和国の建国者ザック・ランズバーグは言う。

ランズバーグはニューヨークを拠点とするアーティスト。ザキスタンは大掛かりな双方向性プロジェクトという「作品」の1つだ。ユタ州の砂漠にある領内で、ロボットの守衛が「勝利のアーチ」を守る。

建国の目的は、国家主権と外交承認が、いかにして人や集団を非合法化するツールになり得るかを探ることだ。台湾の主権が組織的に無効化されていることに触発されたが、自分とアメリカとの関係にも疑問を投げ掛ける。

マイクロネーションの可能性は、国家主義的な所属を廃止することではなく、人々が自ら開放的なアイデンティティーを選択することが一体感を生むところにあると、ランズバーグは語る。

「全ての人が自分の国旗を掲げ、隔離された場所から自分のちっぽけなアイデンティティーを主張し始めたら、どうなってしまうだろうか?」

<本誌2020年5月5日/12日号掲載>

【参考記事】新型コロナ都市封鎖が生み出す、動物たちの新世界
【参考記事】新型コロナで外出できない今こそ......世界を旅する映画9選

20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏がイラン大統領と電話会談、地域の緊張緩和

ビジネス

インド規制当局、取引決済の新方式提案 海外投資家の

ワールド

中国とカナダ、関税引き下げで合意 戦略的協力推進へ

ビジネス

インド、防衛企業への外資導入促進に向け規制緩和を計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 2
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 5
    イランの体制転換は秒読み? イラン国民が「打倒ハ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中