中国経済は本当に世界を「V字回復」へと導けるのか?
CAN CHINA LEAD THE RECOVERY?
中国はもちろん、当初の流行への対応を模範的と称賛された香港や台湾、シンガポールでも制限解除の直後、ウイルス感染の第2波に見舞われた(多くの場合、国外からの渡航者や帰国者が新たにウイルスを持ち 込んでいた)。こうした経緯はアメリカ、ドイツやイギリスなど、封鎖措置の経済的コスト(や政治的な実用性)と、国内活動を一部正常化した場合の人的損害をてんびんに掛けようとする国に警鐘を鳴らしている。
「中国の事例は通用しない。欧米では個人の自由をより重視し、政府の統制がそれほど厳しくない。そのた め、経済活動をどこまで犠牲にするべきかという論議がより多く起きている」と、ブルックスは言う。
だが、より大きな問題がある。中国経済の一部は回復を見せてはいても、特に高額商品への支出を消費者が控えるなか、経済の大部分はまだ持ち直してはいない。
さらに、中国が最悪の局面を抜け出し始めたとしても、主要な輸出先で貿易相手である欧州各国やアメリカが感染の急拡大のただ中にある状況では、回復の出鼻をくじかれることになりかねない。
「現時点で懸念しているのは、欧米に迫る景気後退の(消費者支出に与える)影響だ」と、ポールソン研究所の研究フェロー、宋厚沢(ソン・ホウツォー)は話す。
理論上、今年初めの経済的打撃は消費者が購入を延期した結果であり、 この典型的な繰り延べ需要はこれから爆発的な購買行動となって成長を押し上げるはずだ。だが「今までのところ、需要は以前の水準になかなか戻っていない」と、宋は指摘する。
よみがえる金融危機の記憶
宋の予想では、今年後半に大幅成長を記録するどころか、中国の行く手にはさらなる暗雲が待ち構えてい る。「第2の減速がやって来る。今年1月や2月ほど深刻ではないが、無視できない規模になるだろう」
中国の回復傾向の分かりにくい点は、自動車メーカーが通常どおりに戻っている一方で、自動車販売店はそうではなく、消費者が自動車を購入していないこと。工場は再開されても、輸出先の市場は閉鎖中だ。だからこそ、見極めが難しい。
「パターンにむらがある。生産サイドは活況を呈しているが、消費サイドはずっと軟調に見える」と、英調査会社キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ニール・シアリングは言う。「V字回復が起こるかは断言できない」