最新記事

韓国

韓国、回復患者の再陽性は「ウイルスの死骸」が原因だった?

South Korea Experts Say Recovered Coronavirus Patients Retested Positive Because of ‘Dead’ Virus Parts

2020年4月30日(木)13時15分
エミリー・チャコール

感染者は減少傾向にあるが不安は消えない(写真は4月25日、社会的距離を守りながら失業者用試験の列に並ぶ韓国人、ソウル) Kim Hong-Ji-REUTERS

<しかし、それ以外の原因や、再陽性が増えている理由は謎のまま>

韓国では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)から回復した患者が「再陽性」になるケースが増えて問題になっている。容態回復後のウイルス検査で陰性と判定された(つまり完治したと見なされた)のに、その後の検査で再び陽性と判定された人の数は、韓国疾病管理本部(KCDC)によれば、4月29日までに292人にのぼっている。

KCDC新型感染症中央臨床委員会の当局者たちは、29日に開いた記者会見の中でこの問題に言及。再陽性の判定は、必ずしも再感染を意味するものではないと述べた。

韓国の複数の報道機関によれば、同委員会の呉明燉委員長は再陽性の判定が出た原因について、「死んだ(つまり不活性化した)」ウイルスの一部が患者の細胞内に残っていて、それが検出されたものだろうとの考えを示した。

同国政府が出資している通信社の聯合ニュースによれば、呉は会見で「ウイルスが不活性化しても、検出対象のRNA(リボ核酸)が細胞の中に残ることはある」と説明。「既に死んだウイルスのRNAが検出されて、再び陽性と判定されている可能性が高い」とした上で、新型コロナウイルスには「慢性感染症を引き起こす」能力はないことが分かっているとも述べた。

再陽性者の割合がじわじわ上昇

韓国では、4月に入ってからずっと、一度回復した人が再陽性と判定されるケースが増えてきている。KCDCは17日、回復してその後の隔離も解除された後に「再陽性」となった元患者が163人確認されたと発表した。この時点で、韓国で回復後に再陽性の判定を受けた人の割合は、全体の2%をやや上回る程度だった。これが29日の発表では、成人の場合は回復した人の約2.7%、子どもでは3.4%に増えている。

KCDCが17日に明らかにしたところによれば、COVID-19から回復した患者が隔離を解除されてから再陽性と判定されるまでの期間は、人によって1日から35日。平均では13.5日程度だった。再陽性となったうちの137人を調べたところ、61人に軽い症状がみられ、72人は無症状だった(残る4人は発表時点で結果が出ていなかった)。またKCDCは、再陽性者からの2次感染は確認されていないとも明らかにした。

韓国では26日までに263人が再陽性の判定を受けており、KCDCはこの問題について今後も調査を続けると表明した。

KCDCは引き続き、「2次感染の可能性を明らかにするために、再陽性者と接触した人々の追跡を行う」と述べた。

米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によれば、29日朝の時点で、韓国の新型コロナウイルスの感染者数は計1万761人、死者は246人に達している。同国保健省の報告でもKCDCの報告でも、19日以降はこれまでで初めて、一日の新規感染者が15人を下回っている。

(翻訳:森美歩)

20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中