最新記事

ロシア

プーチンを襲うコロナ経済危機 高まるロシア国民の不満

2020年4月29日(水)11時41分

支持率低下

ロシアで確認された新型コロナ感染者数は約5万8000人、死者数は513人で、プーチン氏はモスクワ郊外にある公邸からビデオ会議などを用いて執務している。

世論調査会社レバダによると、同氏の支持率は63%と、2013年以来で最低となった。

社会不安の兆しも見え始めている。ロシア南部で20日、ロックダウン(封鎖措置)に反発するデモが実施されたほか、オンライン上では抗議の声が散見され、零細企業からは当局の支援が不十分だとの不満も広がっている。

個人事業主は現在、休業しつつも従業員への給与支払いを続けるよう通告されている。

自動車修理店を営むダリヤ・カミンスカヤさんはロイターに対し、仕事が無くなり、ポケットマネーで従業員7人の給与を支払ったと語った。「過去の革命はこうやって始まった。プロレタリアートからね」

ある年配のビジネスマンは、中小企業で破綻の連鎖が起こると予想。「(旧ソ連が崩壊した)1991年ほどひどくはないにしても、苦しい状況が訪れる。暴力的行動や大規模な抗議活動は実現しなくても、国民が一触即発状態になっていくことはありそうだ」と語った。

プーチン批判

プーチン大統領は新型コロナとの闘いで当初、前線に立たなかったと批判されているが、大統領府は地域の指導者に対応を任せたのは適切だったと批判を一蹴する。

しかしプーチン氏が米国その他の国々に恩を売るため医療物資を送ったことは、物資が手に入らない国民の一部から不評を買った。

薬局でマスクも解熱剤も買えなかったある女性は今月、「たぶん全部、米国にあげてしまったのね。なぜそんなことを」と嘆いていた。

プーチン氏の任期はまだ2024年まで残っている。同氏は国営テレビを味方につけ、警察は抗議活動を抑え込むようきちんと訓練されており、司法も抗議活動に対する厳しい法律を使ってデモ参加者を罰することができる。これらは実証済みだ。

政府は金・外貨準備として5500億ドル超を確保しており、財務省は油価の低迷が長引いても乗り切れるとしている。プーチン氏はこれまで国家権力をてこに野党の抑え込みに成功しており、野党からの差し迫った脅威は顕在化していない。

しかし一部には、経済的な苦境と新型コロナ対応への不満が沸騰しかねないとの見方もある。

野党政治家のウラジミール・ミロフ氏は今月、「圧政と国家親衛隊とでは、国民の真の不満に十分対抗できないだろう」と記し、革命的な状態は進みつつあるあるとの見解を示した。

一方で、プーチン氏は失脚しないと予想する声もある。メドベージェフ教授は「国民の苦しみは深まり、反乱や騒動は起こるかもしれないが、それが直ちに政治体制の変化を招くことはないだろう」と述べた。

Andrew Osborn

[モスクワ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・欠陥マスクとマスク不足と中国政府
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由......
・東京都、新型コロナウイルス新規感染が112人確認 都内合計4000人を突破
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(28日現在)


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中