中国、新型コロナショックで試される労働者のセーフティネット
労働者の抗議活動
この状況は、低賃金で労働集約的な仕事に就き、公的ヘルスケアへのアクセスが限られている約2億人の農村出稼ぎ労働者にとって特に深刻だ。彼らの多くは工場から締め出され、中国がウイルスを制御するために国の大部分を封鎖したため、都市の境界を越えることを禁じられた。
スタンフォード大学の研究者が推計したところによると、出稼ぎ労働者は今年初めの封鎖によって数週間にわたって労働できなかったため、既に最大1000億ドルの賃金を失っている可能性がある。
封鎖期間中にほぼ中断していた労働者の抗議運動は再燃し、業務が抑制されたタクシー運転手といった労働者による活動が特に目立っている。
オックスフォード大学のフェロー(中国法)、ミミ・ゾウ氏は「世界的に深刻な景気後退が迫っていることを考えると、賃金の未払いや社会保険料の未払いを招くような企業の閉鎖は労働争議を引き起こすだろう」と述べた。
中国の労働争議を監視しているChina Labour Bulletinのデータによると、3月に起きた労働者による集団抗議活動50件のうち、半数がサービス・運輸部門で起きている。中国のウイルス流行中心地である武漢で救急病院の建設に携わった人を含め、建設労働者も補償について抗議した。
販売減でフードコートでの職からレイオフされた北京の女性、ワンさん(56)は、55歳という女性の退職年齢を過ぎているため、契約に失業保険が含まれていなかったという。
ワンさんは「私は仕事ぶりのせいでクビになったのではない。私たちはウイルス流行のさなかにあり、誰の生活も大きな危険にさらされている」と語った。
(Gabriel Crossley記者、Cheng Leng記者)
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